在宅で働くママの一日の暮らしぶりや仕事内容、リアルな本音などを紹介していく「在宅ママインタビュー」。今回は、Webデザイナーとして数多くのウェブサイトを手掛けているK子さんです。
■プロフィール
名前:K子さん
年齢:39歳
職業:Webデザイナー
お子さん:3歳7ヶ月
居住地:京都市
ワークスタイル:正社員(在宅+月2、3回出勤)/週5日・1日8時間程度
■簡単な経歴
2003年 大学卒業
2003年 神戸のIT企業に就職
2010年 京都の会社に転職
2016年 シングルで第1子出産
2017年 仕事復帰
2018年 在宅勤務可能な会社へ転職
■1日のタイムスケジュール
6時半:起床。子供が寝ている間に自分の準備、朝食の用意を済ませる。
7時〜7時半:子ども起床。洗濯機を回しつつ朝の準備。
8時過ぎ:子どもを保育園に送る
8時半:仕事開始
12時:昼食。在宅なので簡単に済ませて夕飯の下ごしらえ。
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メールの返事待ちや、デザインチェック待ちの間に家事をちょこちょこと。
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17時半:仕事終了、夕飯の準備
18時:保育園へ子どものお迎え
18時半:夕飯
20時半:子どもと入浴
21時半:歯磨きなど寝る準備
22時半頃:子ども就寝。私も一緒に寝ることが多い。
23時〜:仕事が詰まっているときは仕事に戻る。
―まずは、K子さんの仕事内容を聞かせてください。
K子さん:
主にWebデザイナーとして働いています。今は、社長と社員は私だけという会社に属しているので、小規模な制作案件ではWebディレションも行っています。他にも、個人でDMやチラシ作成を請けることもあります。
―そもそもWebデザイナーになったきっかけは何だったのでしょうか?
K子さん:
昔からイラストを描くなど、デザインの分野に興味があったので、大学は地元の芸大に進みました。そこではグラフィックデザインを専攻し、ものづくりの基礎、デザインやクリエイティブに対する考え方を勉強しました。卒業後はパッケージデザインを手掛けたいという思いがありました。
ただ、私が大学を卒業した当時はITが急成長し始めた時期で、グラフィック分野は規模が縮小されつつあったんですよね。かつ、当時は私も学生だったこともあり、どのようなデザイン会社があるのかをよく知らずに、みんなが知っているような大手企業の採用にしか応募していなかったんです。なので、採用されたのはIT企業のみでした。
―そして、そのIT企業にWebデザイナーと入社されたんですね。
K子さん:
はい。ただ、Webデザインをするのはそれが初めてのことでした。芸大にいたとはいえども、Webデザインを専門的に勉強してきたわけではないので、1から勉強でした。 同僚の先輩デザイナーに教わりながら、初めは先輩がデザインするサイトのボタンやバナーなどパーツを作成し、経験を重ねていきました。
―在宅で働き始めたのはいつですか?
K子さん:
2018年10月からなので、今で1年3ヶ月になります。それまでは、産休や育休期間を含めて約8年間、京都のWeb制作会社に勤めていました。娘が1歳を過ぎたころに産休から仕事復帰し、自宅から約1時間離れたところにある会社まで出社していました。産休明けなので時短勤務になり、お給料は固定給から時給換算に変わりました。
その時期は娘もまだ小さく、保育園に入ったばかりだったので、熱を出したり急なお迎えの呼び出しがあったりと、毎日休まずに出社するのも厳しい時期でした。なので、有給はあっという間に減っていき、時給換算なので仕事を休めば休むほどお給料も減っていきました。
―先日にインタビューした藤愛美さんも「時短になるとフルタイムの半分ぐらいの収入になることがある」とおっしゃっていました。
K子さん:
お給料は本当に驚くほどに減りました。けれども、周りからは産休前と全く同じ仕事を求められることに戸惑いもありました。また、当時の同僚には男性スタッフが多く、奥様は専業主婦という方も多かったんです。なので、私が仕事に育児に家事にと忙しくしている様子を見て「何がそんなに忙しいの?」と言われ、それに私もうまく答えられず、なかなか自分の置かれている状況を理解してもらえないこともありました。今後のことを考えると、このままの給与体系では厳しいと感じて転職を決意しました。
―現在の在宅のお仕事はどのようにして見つけたのでしょうか?
K子さん:
以前から個人で仕事を請けていた元同僚がいたので、その方に相談しました。その方は数年前に独立・起業していて、実は過去に「一緒に働かないか」と誘っていただいたこともあるんです。在宅ワークを前提とし、月2~3回は会社に出社するという条件で採用していただきました。
目次
周りに気を遣わないし、用事があってもすぐに仕事に戻れるのが在宅の良いところ。
―在宅で働き始めてから、生活に変化はありましたか?
K子さん:
元々、個人で請けた仕事を家でやっていたので、自宅で仕事をすることへの抵抗はさほどなかったかもしれませんね。
ただ、私の場合はシングルマザーで母との実家暮らしだったので、母に「自宅で仕事をしてもいいか」という許可は取りました。自宅で仕事するとなると、毎日ずっと近くに娘がいるわけなので、母にとっても生活が変わってくるわけですよね。なので、「週に何回かはレンタルスペースやカフェで仕事する」といった提案をして、在宅ワークをすることに納得してもらいました。
―在宅で良かったと思うことはありますか?
K子さん:
通勤がなくなったことですね。自宅から保育園までは近いんですが、職場勤めしているときは保育園の30分の用事のために午前休を取り、それでも出社時間にギリギリ間に合わなくて全休を取らざるを得なかったこともありました。けれども、今は30分の用事の時には仕事も30分抜けるだけで済むのが良いですね。おかげで、今はフルタイムで働くことができています。ちなみに、昨年は保育園の役員をしていたんですが、在宅だからこそできたことだと思っています。
また、以前であれば、会社を休むときにはまずは社内全員に届くメーリングリストに連絡を入れて、その後にプロジェクトメンバーにも連絡をして、というように連絡にも時間を取られていました。その点、今は社長にチャットで「今から30分だけ抜けます」と言うだけなので、気を遣わないで良いのも大きなメリットですね。
あとは、作業環境がすぐそばにあるので、最近は夜にパソコンを開いて翌日の段取りをイメージするようにしています。そうすることで、作業効率も良くなっている気がします。
―逆に、在宅で困ったことや大変なことはありましたか?
K子さん:
時間のロスが発生することです。例えば、職場であればその場でさくっと話して終わるような話でも、在宅となると打合せの日時を設定して、遠隔でコミュニケーションを取らないといけません。
あとは、在宅となると人事評価のポイントが絞られます。職場勤務の場合は、例えば「前向きに仕事に取り組んでいる」といった姿勢が評価項目に含まれますが、在宅だとそうはいかないですよね。なので、何本のWebサイトを作ったか、どれだけの売り上げがあったかなど、数値で計るしかありません。
―作業している様子が見えない分、そうならざるを得なくなってしまうんですね。
目標は立てるけれども、上を目指さない。
―育児や家事とのバランスはどのようにして取っていますか?
K子さん:
以前は自分で自分の首を絞めてて、バランスがうまく保てないことありました。
今の会社で働きだした当初、社長が用意してくださった目標シートに自分で目標を書き込んでいきました。先ほどもお話したように、在宅の場合は評価軸を数字で設定するしかないので、「月に何件のサイトを作る」といったものです。しかし、その目標を達成するためには夜中にも作業しなければならなくなったり、子どものお迎え中やご飯中に来る連絡に対応する必要が出てきたりと、徐々に働きづらさを感じ始めました。在宅がゆえに、社長ときちんと「どう働きたいのか」というコミュニケーションを取ってこなかったことも一因です。そのため、数か月前に社長に「今の働き方では無理です」とはっきり伝えました。そして、今後は目標を立てるものの上を目指さない、現状維持もしくは緩やかな成長で仕事を続けていくという結論に至りました。
―会社の方も理解を示してくださったんですね。
K子さん:
今は、どのぐらい働くかは自分である程度の線引きをしていますが、フレキシブルにも対応できるように心掛けています。例えば、月2回は土曜日にも娘を保育園に預けているので、平日からあふれた仕事はその日に対応するなど、バッファを設けています。その日に仕事がない場合は、病院に行ったり髪の毛を切りに行ったりと自分の時間に充てています。
また、デザインの場合は必ず「チェック待ち」の時間が発生するので、そういう隙間時間を使って家事をしています。ただ、連絡があればすぐに作業に戻れるように、スマホのメール通知をONに設定して、こまめに確認するようにしています。
―自分でキャパを調整していくことは大事ですよね。
K子さんが日々大切にしているルールや心掛けていることはありますか?
K子さん:
家庭内では「晩御飯中はテレビを見ない」というルールを作りました。もともとはうちの母と娘のチャンネル争いを避けるために生まれたルールですが(笑)。ただ、そのおかげで娘とゆっくり喋ったり歌ったりと楽しみながら食卓を囲むことができています。私もビールを飲みながら食べるのでリラックスタイムです。
あとは、保育園からの帰宅後は娘と必ず向き合って遊ぶように心がけています。娘が「〇〇しよう!」と言ってきたことは、長時間でなくとも一緒にやるようにしています。これは、保育園の先生から『話を聞くだけと向き合って遊ぶでは全然違う』という話を聞いたことがきっかけです。
私と娘の2人だけで過ごす時間も、娘が私以外の大人やお友だちと過ごす時間もどちらも大事にしたいなと思っています。
今後もWebデザインを続けていけるのか、正直不安がある。
―今後はどのように暮らしていきたいと思っていますか?
K子さん:
正直な話、Webデザインの仕事を長く続けていけるのかなという懸念はあります。というのも、最近は自分より若いお客様とお仕事をする機会が増えてきて、「その感性についていけるかな」という不安があるんです。あとは、パソコン業務は目も疲れますしね(笑)。とはいえ、在宅でフルタイムという条件で働く場合、IT系以外のお仕事はお給料が低くなってしまうので、まだまだ頑張れるうちはこの仕事を続けていこうと思っています。
あとは娘に対して、仕事を「嫌なこと」「辛いこと」といったイメージの悪いものにしたくないという思いがあります。仕事は生活の糧であって、尚且つやりがいや生きがい、存在意義を教えてくれるものだということを、自身の姿を通じて伝えていけたら良いですね。
―働くK子さんの姿を見て、娘さんが何かを感じてくれるといいですね。ちなみに、当初の夢だったパッケージデザインなど、他の仕事をやってみたいという思いはありますか?
K子さん:
子どもが大きくなって私の手から離れたときに、やりたいことがあればチャレンジしたいと思っています。
『それぞれの事情や人生のタイミングがあって当たり前』と思える社会になってほしい。
―働くママとして、世の中や社会に対して「こうなればいいのに」と思うことはありますか?
K子さん:
私自身、時短勤務&子どもが低年齢で休みがちという経験を通じて「マイノリティな働き方ってこんなにもキツイんだ」と実感しました。なので、在宅勤務をするようになってからも「あの時、私はどうすれば良かったんだろう」と頭を巡らせているうちに、自分とは異なるマイノリティの人たちの存在も目に入るようになってきたんです。
例えば、病気や介護など様々な事情から働く時間や場所が限られてしまう人がいたり、はたまた昔の価値観が残っている会社で働いているママさんがいたり。あとは、いまだに就活の面接で女性だけが結婚や出産についての質問を受け、それによって機会を奪われるケースもあると聞きます。そういう話を聞くと、もっと世の中全体が『大多数の働き方とそれ以外の働き方』というように考えるのではなく、『働き方なんて様々で、人それぞれの事情や人生のタイミングがあって当たり前』と捉えるようになればいいなと思います。
とはいっても、そうではない考えが根付いている人もいて、その人たちの価値観を変えるのは難しいことだと思っています。なので、そういう人たちにはせめて産休や育休を取っている人のことを『休んでいる』とは捉えずに、『あの人は1年間、子育て支援会社に出向中』ぐらいに捉えてもらえたら嬉しいですね。
―実際、産休・育休は『休暇』ではないですもんね。
K子さん:
あと労働基準法で定められている法定労働時間は、1日8時間・週40時間(週休2日制)となっています。この基準もこれからの時代にあった形に変わっていくといいなと思います。例えば、自宅・職場間の移動に1時間かかる場合は、1日あたりトータルで10時間も拘束されることになるんです。そうなると、保育園に預けられる時間数をゆうに超えてしまうんです。
また、国から支払われる育児休業給付金も、1ヶ月の支給額は「休業開始時賃金日額×支給日数(通常30日)の67%」で計算されます。育児休業の開始から6ヶ月経過した場合は「休業開始時賃金日額×支給日数の50%」です。なぜ6ヶ月を過ぎると減額されるのか疑問です。そもそも最初から100%支払われていいのでは?と思うくらいです。今、育てている子どもたちも将来はおそらく働いて納税するわけですし、もっと安心して子どもを育てられる環境になってほしいなと思います。
―最後に、在宅で働くママたちに向けてメッセージをお願いします。
K子さん:
働く女性やママたちにとって、今の社会の仕組みや制度、風潮は働きづらいもので大変だと痛感します。最近、仕事で年下の女性と接する機会が増えましたし、娘を持つ一人の母親としても、今後、彼女たちがもっと前に進めるような働きやすい社会になってほしいです。そのためには、私も何かしら貢献をしていきたいと考えています。働きたいと願う女性・ママさんたちにとって、仕事は人生を楽しくするものの1つであってほしいですね。
―ますます働きやすい社会になっていくように、今後のK子さんのご活躍にも期待しています!
ありがとうございました!
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