在宅勤務・フリーランスという働き方を選択した”働くママ”への「在宅ママインタビュー」。 今回は、スペインで暮らし、スペイン人に向けた日本食の料理講師をされている松尾京子さんにお話を伺いました。(6/2に公開したオンライン料理教室の記事でも登場されています。)
プロフィール
名前 松尾京子
年齢 42歳
居住地 スペイン
1996年 高校卒業
2000年 ワーキングホリデーでオーストラリアへ1年
2007年 スペインの巡礼宿でのボランティア生活
2010年 スペインで結婚、出産
2011年 日本移住後一ヶ月で東日本大震災のタイミングにあう 同年夏スペイン帰国
2019年 スペイン地方都市ログローニョで日本食家庭料理教室を始める(コロナの影響で現在は休止中)
松尾さんの1日のタイムスケジュール
7時 起床 冬は薪ストーブに火をつける
7時半 子どもと旦那さん起床 それぞれで朝食を準備して食べる
8時15分 子供をスクールバスのバス停まで送る そのまま散歩、畑仕事へ
10時半頃家に戻って家事、仕事 料理の仕事なのでお昼ご飯を兼ねて作る事もしばしば
14時半 旦那さん帰宅、お昼ご飯、休憩
16時 おやつ作り、趣味の勉強
17時半 子供帰宅、宿題、一緒に遊ぶ
20時 夕食
22時 子供就寝、私の瞑想タイムや読書時間
24時 就寝
−今のスペインの状況は?この自粛期間はどう過ごしていたのかお聞きしたいです。日本と比べて自粛期間はかなり厳しく取り締まられたと聞きました。
スペインの夏は、毎日お祭りというくらいにぎやかです。でも、今年はコロナの影響で牛追い祭りも禁止に…。自粛期間は約2ヶ月半くらいでしたね。買い物はコーラ1本だと買い物と認められないし、買い物をした際のレシートを必ず携帯し、警察に掲示を求められたときに出せなければ罰金の対象に。車で買い物する時は同乗者を乗せることもできなかったので、とても厳しかったです。 元々私は畑作業もやっていますが、ずっと作業ができませんでした。4月23日にやっと役場から作業可能の通知が来ました。 スーパーやパン屋、薬局くらいでしたね、営業の許可が出ていたのは。
−日本では飲食店のテイクアウトも行われていましたが…。
レストランは完全に営業ができませんでした。5月の初め、ようやくレストランでテイクアウトが始まりました。やっと動き出したという感じです…!
−あなたの仕事内容を聞かせてください
スペイン人向けに日本食料理教室の講師をしています。
−この教室はどれくらいの時間でやっていますか?1コマ何分、で1日どれくらいやっていますか?
1コマ2時間・週1回で、生徒さんは18人です。この仕事は去年3月に始め、今年の3月には新しい教室がスタートする予定でした。生徒さんとも楽しくレッスンできていたし、次回が楽しみ…と思っていたときにコロナが発生…。外出も緩和されてきたし、レッスンに向けて色々レシピを温めているところです!
−今のお仕事を始めたきっかけを始めたのはいつからですか?
元々調理の仕事をしていましたが、子どもとの時間がもっと欲しいと思うようになり、2年間は専業主婦をしていました。そんな中で自分でも料理教室に通っていたところ、先生から「日本料理のクラスを受け持ってみない?」と誘ってもらったのがきっかけです。チャンスをくださった先生には感謝しかないですね! 日本人がやっているということで珍しいのか、クラスにも人が集まってくれて、とても光栄です。
−どうして今のお仕事をしようと思ったのですか?
私はスペインの中でもかなり地方の田舎で暮らしていますし、海外の地方で日本人に会った事の無い人達や、日本食を食べた事の無い人達に、日本食や日本の事を知って欲しいという想いをずっと持っていました。 −海外での生活が長くなっていますが、仕事となると不安はありませんでしたか? 私は語学が苦手なので、今でも不安です…。スペイン語は、小学生の娘に教えてもらってもらうくらい(笑)。料理のレシピも娘やスペイン人の友達に添削してもらっています。 教室がスタートする前日に、それまでお世話してくれたスタッフにやっぱり無理…って泣きついたこともあります。今ではいい想い出ですけどね(笑)。
−日本人や外国人、と関係なく飄々とコミュニケーションを取っているようにみえたから、とても意外です!
語学に不安があるから、料理なんて教えられない、と嘆いたら、そのスタッフから、あなたはスペイン語を教える訳じゃなくて料理を教えるのよ、大丈夫!!と励まされてなんとかスタートすることができました。
−実際、料理教室をやってみてどうでしたか?
スペインの人たちって、本当にみんな人懐こくてフレンドリー。私が作ったレシピの間違いを優しく正してくれるし、「これ足りないよー」とアドバイスをしてくれるし、私の料理教室を心から楽しんでくれます。生徒と講師という立場を超えて、みんな友達みたいです!
−海外で暮らすということは若い頃から考えていたのでしょうか?
10代の頃、修学旅行で北海道に行ったときに、初めて飛行機に乗りました。そこから飛行機に憧れを抱いて、飛行機の整備士になろうと夢を見ました。それは断念してしましたが(笑)。とにかく早く働きたかったという想いが高校生の頃からありました。自分で早くお金を稼ごうと決めていて。バイトは色々掛け持ちしてやっていましたが、両親が理容店を経営していることもあり、理容師への道を選択しました。数年理容師として働きましたが、そこまで好きな仕事ではありませんでした…。そこで一回辞めて、フリーターになりました。その時バイトの掛け持ちをしていて、飲食店で働くことが多くなり、料理への道が拓かれた感じですね。
−働くうちに、海外での生活が視野に入るようになったのですね。ワーキングホリデーにも挑戦されたとか。
フリーターの時、空港の洋食屋さんで働いていたことがありました。その時は主にホールでしたけど、キッチンのヘルプにも入ることもありました。そのレストランの支配人がドイツで料理人をされていた方で、 「ヨーロッパはいいぞ!」 と言われて、海外が気になっていたのと、当時オーストラリアにいとこがワーキングホリデーに行っていたのと相まって、海外に行った人に会う機会が増えてきました。お金を貯めて、ヨーロッパへツアー旅行を申し込みましたが、私には物足りなくて。そこで、思い切って、オーストラリアへワーキングホリデーをすることを決断しました。
−今のお仕事を始めるにあたって、どのような行動をしましたか?(仕事の探し方、スキル習得など)
日本関連の事をやっている人や自分が興味のある人とは直接コンタクトして、コミュニケーションを取るようにしています。 情報をチェックして常にアンテナを張っています。もちろん仕事に繋がる事ばかりじゃないけど、自分が楽しいので、満足しています。スキル磨きは本やインターネットが中心ですね。
−在宅(フリーランス)でよかったことは?(働いていてよかったことは?)
家の事をやりながら、時間を自由に使えるのは本当に嬉しいです。外に行ったらその時間が移動時間や家族のことが気に掛かってしまうので…。だからと言って、家に長くにいすぎてもダメだと思いますね。フリーランスの仕事は、時間のコントロールができるからスケジュールが立てやすい。時間の制限がないから、仕事の時間との線引きは難しいですが。
−在宅(フリーランス)で困ったことや大変だったことは?(それをどう解決していったか?)
集中できる時間やスペース作りは常に課題ですね。学校がないとずっと子どもがいるし、コロナの影響が出てからは、一人時間の確保が難しかったです。子どもの学校での勉強のフォローもやらないといけないですし。子供が寝ている間に自分の仕事をする、または、朝に時間を作っています。家族がずっと家にいると、食事作りもやはり大変ですね。大人と違って、栄養のバランスを考えないといけませんから。ただ、私の場合は、レシピのネタにから好都合ではありました。あとは、イヤホンをして、音楽などをかけて集中しています。
−大事にしていること、ルールなどがあれば教えてください。
その都度、優先順位を考えて行動しています。自分でルールを決めることも大切だと思っています。あと、日本のことを伝えたいという想いを持っているので、自分が日本について文化や季節のことなど勉強は欠かせませんね。
−国際結婚をされていますが、どうですか?
夫もそこまで口数が多いわけではないので、ボディーランゲージで何とかなっています(笑)。全て一緒に楽しもう!と意気込まず、夫婦それぞれお互いの世界で生きていくことを大切にしています。夫は夫で、好きことがあるので。一緒に何でもやろうとすると、期待が強くなってイライラしてしまいますからね。もちろん、相手へのリスペクトは忘れないようにもしています。言葉と文化が元々違う人だし、敢えて全て理解しようと気張らず、力を抜いています。なので、うちの食卓は、ご飯とパン、醤油とオリーブオイル、梅干しとオリーブが並んでいます(笑)。
−仕事、家事、育児をどうやってバランスとっていますか?
とにかく一人で何でもやろうとしないことですね。完璧を求めないようにしています。 大変な時は周りにお願いすることもあります。子どもにも自分があれこれ世話を焼きすぎず。家のこともほったらかしても、私以外の誰かがやるときはやってくれますしね!
−これからどういう風に暮らしていきたいですか?移住生活についても教えてください。(目標やプラン)
家族や友達と楽しく過ごす、これに尽きます!住むのは、自然を感じる場所であれば、どこでも良いと思っています。…と言っても、田んぼと川原、日本米が恋しいですね。スペインで日本米の作っている人がいるので、そこへは訪問したいです。 移住や移動生活は特に考えてないけど、タイミングが合えば可能と言える位に生きるスキルを身につけておきたいですね。
−社会や国に対して望むこと、在宅(フリーランス)をやってみて感じたことってありますか?
望むことはないかな…。結局自分の人生は自分次第だと思っています。 スペインの田舎に住む、私にしかできない強みを出していきたいですね。料理教室の講師をしていますが、料理は型にはめず、スペインの伝統的料理だったとしても、日本の調味料を入れて作るなど工夫したいです。 あとは、フリーランスだからこそ、継続的に人と繋がるようにしています。Facebookのグループに入っていますが、そこで情報交換をした後、アイディアがたくさん出てきます。
このまま料理を続けていくかはわかりませんが、いつかは自分のお店を開きたいですね!
−仕事で役立つツールがあれば教えてください。
−これから在宅やフリーランスで働きたいと思っているママさんたちにメッセージが欲しいです!
母は毎日やる事が多く、更に家で仕事となると自分で時間を管理したり、集中出来る場所を作ったりと更にやる事が増えそうな気もしますが。家で仕事が出来ると家族との時間も増え、色んな面で協力してもらう事にもなり家族もお互いを尊重出来る存在になると思います。 時間が自由な分、仕事をコントロールしながら自分の時間を楽しみ、趣味を満喫することも必要だと思います。 子どもが小さいうちは大変かもしれませんが、子どもの成長はあっと言う間です。それと共に自分も年齢を重ねていくので、本当に自分がやりたい事を見つけて実践する時間も必要です。 タイミングは人それぞれですので、焦らず、でも何か行動して継続していくことで、きっと自分が描く未来へ繋がる一歩になると思います!
松尾さんSNS&レシピ
オンライン料理教室の記事でも登場してくださった、松尾京子さん。気張らず、常に自然体の姿勢は自然を愛する心とご本人が元々持っている性質から産み出されたものかもしれません。 本当に自然を愛している方で、インタビュー中も 「こんな素敵な花を見つけました。」 と、摘んだ花や野草たちを見せてくれました。自然は、松尾さんにとって必要不可欠、かつパワーの源なのでしょう。 そんな松尾さんの働き方もやはり自然体。きっと、今後の活躍の場がスペインではなく別の国、または日本だったとしても変わらず縁を引き寄せて、活躍されると思います。 これほど程よく力が抜けた状態を保ち続けるのは、日本の働くママにはなかなか至難の技かもしれません。子どもが小さければ小さいほど、全ての責任を負いがちですから。 何かに追われて、視野がせまくなっている時こそ、道に咲く花や木々の生命力を感じることが大切だなと気づかせてもらいました! 子どもや夫婦間との関係を穏やかにして、自分の心も大切にしている松尾さんの姿勢は、無理をしがちなママたちにぜひ参考にしてもらいたいです。