「IT・クラウドサービスを活用した業務代行」を手掛ける、株式会社ジェントルワークス。クライアント企業の悩みに合わせたITツールのご提案から始まり、バックオフィス業務を代行することで、小~中規模の企業やベンチャー企業、個人での起業をサポートしています。総務、庶務、経理といったいわゆる「バックオフィス」と呼ばれる事務作業以外にも、ルーティン化できる作業であれば、ジェントルワークスのスタッフがリモートワークで代行するため、クライアントは本業のビジネスに集中できるという仕組みです。代表取締役社長の串田幸江さんに、こうした業態の会社を興すに至った経緯と、これからの展開について、お話をお聞きしました。
全員が在宅ワーク、そして個人事業主のジェントルワークス
➖ジェントルワークスという会社について教えてください。
私たちジェントルワークスのスタッフは、全員が個人事業主の集まりです。労働時間が定められる雇用形態ではなく、時間の使い方が自由になる準委任契約という形を選んで働いています。
在宅ワークという働き方で、仕事をしたい、世の中へ参加したい、という思いを抱く人たちと、企業活動におけるバックオフィス部門をアウトソーシングしたいクライアントをマッチングしているのが、ジェントルワークスという会社です。
➖スタッフの皆さんが「準委任契約」を選ぶ理由は何でしょうか?
スタッフは、育児や介護など、様々な事情を抱えています。働きたくても働けず、社会から切り離されていると感じている人たちにとっては、提示された労働時間の通りに働くことは至難の業です。定時という縛りのない準委任契約を結ぶことで、時間を自分で采配できる方々に仕事というコミュニケーションインフラを提供しているのがジェントルワークスだと考えるとわかりやすいかと思います。
➖こうした事業展開を始められたきっかけは?
私自身は、プログラマーとして企業の中で最前線を走り続けてきました。起業にあたって、今まで自分が経験してきたことを総動員して起業したのですが、そこで一緒に働いてくれるスタッフの実情を見ると、世の中には、子育てや介護などの家族の都合で働く時間がとりづらく、ブランクができてしまった人たちがいることに気付いたのです。その人たちは、一日のうち限られた時間帯なら、とか、昼間の時間は無理でも家族が寝静まった後の数時間なら働けるのに、というジレンマを抱え、身動きが取れずにいた。こうした方々の「社会との断絶」を解消するには、在宅ワークを軸にしたコミュニティを形成すればいいのではと考えたのです。技術の発達が、移動の手段を馬車から車や電車などに変化させたように、ITツールの発達によって、在宅ワークという働き方が実現できるようになった今、こうした仕事の在り方がもっと広く認知され、新たな可能性が広がっていくといいなと考えています。
在宅ワークの可能性について
➖在宅ワークがもたらす可能性とは?
在宅ワークとは働き方の一つであって、価値と報酬の等価交換であるという、「仕事」の基本には何ら違いはありません。
在宅ワークをしたいと集まってきてくれた人たちには、最初にそこをきちんとお話して、理解してもらっています。「そんなに甘いものではありませんよ」というわけです(笑)。
➖セミナーを開催しスタッフを発掘
2020年、佐賀県の鳥栖市の創業支援プログラム「鳥栖市産業支援相談室:通称鳥栖ビズ」というところから、「在宅ワーク活用セミナー」をしてほしいと依頼を受け、二部構成で開催しました。一部は「これから在宅ワークをしたい人」向けに、在宅ワークの現実と、スキルやツールをレクチャーする内容。二部が「起業を考えている方々」に、事務などの苦手な分野をリモートでアウトソーシングする方法をお伝えする内容です。この講座の冒頭で、なぜ働くのか、働くことはあなたにとってどういう意味があるのか、という問いかけをしました。働くことへのマインドを育てるところからスタートし、ITツールの使い方やセキュリティなど実際に業務をするうえで必要なスキルを身に着けてから、クラウドサービスから案件を受注するステップアップ講座、自分自身を振り返り、セルフマネジメントを経験してもらうブラッシュアップ講座、といった内容を一年かけて体験していただきました。講座の期間中、「このような機会で新たな仲間と学ぶ環境を得られたのだから、皆さんの手で何らかの形に残せると良いですね」と、講師側からの希望を込めた投げかけをしていたんですね。これが実を結び、佐賀県鳥栖市を拠点に在宅ワークを行うグループ「なでしこまむ鳥栖」の発足につながりました。
➖受講者とはどのように接してこられましたか?
講座の受講者とは、常に対等でした。仕事は、価値と報酬の等価交換。発注する側と受注する側も、対等であるべきだからです。
講座の目的そのものが「自律して仕事できる人を育てる」ということなので、ステップを踏んで受講者が自律的に行動できる「場」になるよう、心がけていました。
在宅ワークの甘くない現実とは、きちんとした仕事ができなければフィードバックすら得られず、次の発注がなくなる、という点。
まだ講座の受講生という立場の方々を相手にしていても、いずれ在宅ワークをプロとして請負ってもらうからには、発注者である講師と対等に仕事をしていただく必要がありました。受講生の方からしてみれば、相手が私たち講師なら、厳しいことを言われたところでいくらでもリカバリーできます。本番の仕事では、厳しいダメ出しが来る前に、二度目の発注がなくなるだけです。そうした現実に立ち向かうための筋トレとして、講座の中では徹底的に「仕事と自分」に向き合っていただきました。
仕事とはコミュニケーションなり
➖ブランクがある方には、踏み出すのに勇気が必要そうです。
在宅ワークとは働き方のひとつであって、どこでやろうと基本は同じです。弊社では事務作業や経理などのバックオフィス業務を代行しているので、作業としては黙々と進めるものも多いですが、基本的に、クライアントのチームメンバーだという意識を持ち、お客様と密にコミュニケーションを取りながら、対等に仕事をしてもらっています。
仕事とは常に相手があるものです。誰かが困っていることをやる、誰かがほしいものを提供する。それをリモートで行うわけですから、待ちの姿勢ではなく、自分を律していないと良い仕事はできません。そのあたりも、私たちのスタッフには繰り返しお伝えし、皆さん理解してくれていると思います。
在宅ワークは選択肢の一つ
➖コロナ禍で、在宅ワークが推奨される企業もとても増えてきました。
在宅ワークが、あらゆる問題を解決するとは、まったく思っていません。向き不向きがある働き方なので、向いている人、あるいはそれしか手段がない人が仕事をするための、選択肢の一つです。
働き方の選択肢が増えるのは大歓迎ですが、私が懸念しているのは「家の中に仕事が居候してしまう」状態。今まで会社でやって来たやり方をそのまま家に持ち込むのは、「在宅ワーク」ならぬ「仕事の居候」に他ならないと思っています。ジェントルワークスのスタッフは、スタッフ同士でチームを組み、クライアントのメンバーの一員として、在宅で働くためのペースやリズム、基盤をきちんと持っています。働かされるのと、自らの意思で働く姿勢の違いと言えますね。
最初に「甘くない現実」を知っているからこそ、メリハリをきちんとつけ、自分をマネジメントできる。そんな働き手の集まりだと思います。
➖これからのジェントルワークスはどうなっていくでしょうか。
働き方は、刻々と変化しています。技術やツールの発達もそうですが、働く人を取り巻く環境も時代とともに変わってきています。ジェントルワークスとしては、これからもアジリティ(敏捷性)とレジリエンス(耐性)をもって、しなやかに、働くことにハードルを抱えている方々を支援していけたらと考えています。
はたママ読者へのメッセージ
➖最後にはたママ読者へのメッセージをお願いします。
ブランクがある方、働くことに困難を抱えている方の社会復帰には、勇気がいりますよね。勇気を出して踏み出して、少しずつステップアップを重ねても、次に何をしたら良いかわからない。そんな時はぜひ、私たちに聞いてください。求める声を上げてもらえれば、必ず返事をお返しできる、ジェントルワークスはそんな会社です。
株式会社ジェントルワークス
https://www.gentleworks.jp/
ご自身はずっと、企業の中でエンジニアとしてバリバリ活躍してこられたご経験を持つ串田社長。バイタリティとユーモアにあふれた語り口からは、「働くこと」への喜びと希望がひしひしと伝わってきました。働くことにハードルを抱える人たちに、働き方の幅を広げることでこの喜びを分かち合ってもらいたい、そんな情熱にあふれたインタビューとなりました。