コンテンツ管理システム(CMS)「Concrete CMS」が好きというフリーランスが集まって設立された株式会社マカルーデジタル。成り立ちからユニークな同社は、取締役4分の3が子育て中のパパとのこと。今回はそのうち2人のパパ取締役とバングラデシュ出身のパパ社員、計3名にご登場いただきます。フルリモートを実践してきて感じたことや育児との両立、そして男性がどうしたら育児にもっと関われるようになるのかについてもヒントをいただきました。
職業:株式会社マカルーデジタル 取締役
お子さんの年齢:7歳 4歳
居住地:愛知県
職業:株式会社マカルーデジタル エンジニア
お子さんの年齢:7歳 6歳
居住地:埼玉県
仕事を理由に拠点を変える考えはなかった
―まず御社の事業内容について教えてください。
宇佐見さん 「Concrete CMS」というオープンソースと呼ばれる種類のCMSがあり、それを使って、Webシステムおよび Webサイトの開発をしています。
―現在はどのような働き方をされていますか?
宇佐見さん 当社では、東京都が出している新型コロナウイルスに関する4段階の警戒レベルに合わせて出社回数を変更しています。
警戒レベル4→フルリモート
警戒レベル3→週1出社
警戒レベル2→週3出社
警戒レベル1→全日出社
この1年近くはずっと4でしたので、ほぼフルリモート働いていました。
―コロナ前からリモートワークは取り入れていらっしゃったんですよね。
宇佐見さん そうですね。上野は愛知、前回のインタビューに登場した久保田は北海道在住ですから。当社のCTO(最高技術責任者)も、妻の仕事の関係で神戸に移住し、その後オーストラリアに飛んでそこで1年間仕事をして、また日本に戻って……と、拠点が目まぐるしく変わっています。
―いろいろな所に住んでいる人達で会社を立ち上げたということですか?
宇佐見さん そうです。Concrete CMSをやりたいという人がいて、みんな住んでいるところがバラバラだったんです。では、一つの場所に集まって会社を設立するのかというとそんな気もなかったので、それぞれの場所から仕事をすることになりました。立ち上げメンバーは4人で、東京が2人、愛知が1人―上野ですね、そして、社長は当時京都に住んでいました。最高責任者は東京にいないけれど、本社は東京という状態でスタートしています。ですから、リモートワーク自体は抵抗のない会社ではありました。
―それが自然なかたちだったのでしょうか?
宇佐見さん 自然かどうかは分からないけれど、仕事を理由に場所を移るという感覚がなかったんです。そうはいっても東京の仕事が多いので、不便を感じて最終的に社長は東京に移住してくることにはなるんですが。もとはいえばフリーランスの集まりというのが、一番のポイントですね。自分の仕事は自分で片付けるというスタンスで成り立っています。
―取締役4人のうち3人がパパとお聞きしましたが、子育てしながらでも働きやすい環境への取り組みは何かありますか?
宇佐見さん もともと残業が少ない会社ではあったんですが、子どもが生まれてからは特に「残業はやめよう」という雰囲気は確かにあります。そして、そのきっかけは、久保田✳︎でもあります。彼女が限られた時間の中で結果を出していたので、別に残業はいらないなって(笑)。ここにいるビポロブをはじめ、外国人が多いというのもあるのかもしれません。役員を除くと社員は現在8人で、そのうち4人が外国出身です。彼らは、ダラダラと仕事することを正義としないので。必要があれば当然やるけれど、無駄に時間を過ごさないというのは会社の空気として流れているかもしれません 。
✳︎ワーママ社員久保田さんのインタビューはこちら
―フルリモートの人もいれば、出社する人もいるという状態で、課題は何かありますか?
宇佐見さん やはりコミュニケーションでしょうか。特に新入社員に対しては大きいですね。リモートに入る前に関係性ができていた人たちはオンラインになってもある程度言いたいことを言えますが、一度も顔を合わせたことのない社員同士だとやっぱり難しい。コロナ禍に入ってからもメンバーは1人増えているので、その人は大変だろうなと思います。
―それに対するフォローや対策は何かありますか?
宇佐見さん なるべく密にコミュニケーションをとれるよう、声をかけています。出社していた時は、昼休みにやりたい人が集まってウノをして遊んでいました。その延長線上で「オンラインでも何かゲームをやろうよ」ということで何回か開催してみました。それで会ったことのない人同士も少しは打ち解けることができました。
―いろいろなところに拠点を置いている人たちが集まっていることに興味を持って、入社を希望される方もいるのでは?
宇佐見さん いらっしゃいます。ただ、誰でも入社していきなりフルリモートができるほど単純な仕事ではありません。将来像として描くのは構いませんが。北海道にいる久保田も、オーストラリアに行っていた当社の CTO もそうですが、フルリモートの方が大変です。「頑張ってるね」と、誰からも思ってもらえない。頑張っているかどうかは結果でしか見てもらえません。
結果で評価するのが基本ですが、もし頑張っている姿を間近で見ていたら、結果が思わしくなくても同情の余地はあるでしょう。「どうしたの?」って。ですが、フルリモートはそこが見えないので、会社としては評価が厳しくならざるを得ない。それを踏まえた上でやれることが大前提です。フルリモートより、適度に出社したほうが楽なのではと思います。
―上野さんは今の話に頷いていらっしゃいましたね。
上野さん そう思います。私は、東京のお客さんとの打ち合わせついでに会社に立ち寄るなど、できるだけみんなと顔を合わせてコミュニケーションを取るようにしていました。それがコロナ禍でオンラインのみになり、最低限しか会えないのが課題ですね。
―今後取り組んでいきたい事業や展開について教えてください。
宇佐見さん 当社の商品の中で、社内ポータルパッケージというのがあります。会社用のポータルサイトを立ち上げましょうという商品です。コロナ禍においては、社内情報のハブとなるものを設置するという需要は高まっていると考えています。実際にお問い合わせも非常に多いので、これをさらに発展させていきたいですね。今後はConcrete CMSにこだわらず、いろいろなシステムの開発にも着手しようと考えています。
―求める人材はどんな人ですか?
宇佐見さん 仕事が好きで、楽しめる人です。辛いと感じたら、それはやめたほうがいい。社員には、仕事が楽しいかどうかで全てを判断してほしいと思っています。
3人のパパ それぞれの育児への関わり方
―それぞれの主な業務内容について教えてください。
ビポロブさん エンジニアとしてプログラムを書いたり、サーバーの設定をしたりしています。最近はプロジェクトのとりまとめも担当しています。
上野さん サーバーインフラといって、Concrete CMSが動くネットワークを構築するという、裏側の仕事をしています。それと、Concrete CMSのユーザーコミュニティーを運営しています。これは仕事としてではなく、個人でやっていることですが。
宇佐美さん プロジェクトの進行管理や人事系の仕事などをしています。クライアントワークと経営的なことを半々でやっていて、会社内では数少ない非エンジニアです。
―子育てには普段どのように関わっていらっしゃいますか。
ビポロブさん 妻と一緒に子どもの準備をして、下の子を保育園に連れていき、それから仕事に取り掛かります。ときどきお昼休憩を遅くとって、子どものお迎えをすることもあります。仕事が終わると子どもの勉強を見たり、お風呂に入れたりしています。在宅でも働けるからこうした関わり方ができ、とても助かっています。
―ご出身のバングラデシュでは、男性の育児に対する関わり方はどんな感じなんでしょう?
ビポロブさん 都市部だと働いてる女性は2~3割くらいでしょうか。ですから、基本的に女性が子どもの面倒を見ている家庭が多いですね。田舎のほうは結構自由で、子ども同士で連れ立って遊んでいて、親は放任しているような感じです。
上野さん 僕は子どもを幼稚園へ送ることと、洗濯を主に担当しています。妻が仕事で不在の時など、子どもが学校や幼稚園から帰ってきた後に面倒をみないといけない時は、お昼休憩を夕方のほうにずらして、子どもが帰って来る時間に合わせるといった工夫はしています。
―上野さんはずっとご自宅で仕事をされているんですよね。
上野さん そうですね。特に子どもが小さい時や一斉休校でいつも家にいなければいけなかった時は大変でしたが、家で仕事をしていたから、少しはフォローできたかなとは思います。妻からは「そんなに貢献していない」と言われていますが(笑)。
宇佐見さん 朝保育園に連れて行くことと、夜お風呂に入れて歯磨きをさせることはルーティンワークとして必ずやります。あとは家事ですね。家事といっても、子どもと一緒に片付けとか、食洗機に皿を放り込むだけとかですが。
―お子さんが生まれて働き方は変わりましたか?
宇佐見さん すごく変わりました。立場上残業代が出ないということもあって、以前はダラダラ働くタイプだったんです。「いったんここで休んで後で頑張ればいいか」ということが、子どもがいない時代は可能だったんです。けれど、子どもがいるとお風呂の時間になったらお風呂に入れなくちゃいけないし 朝は必ず同じ時間に送って行かないといけない。そのタイムリミットの中で仕事をしないといけなくなってしまいました。
―やはり、リモートワークの方が子育てに関わりやすいですか?
宇佐見さん そうですね。我が家は19時からがお風呂の時間で、当社の終業時間は19時。在宅で仕事をする日は、子どもをお風呂入れるのに間に合うので一緒に入れるようになりました。
―コロナが終息したら全面的に出社になるのでしょうか?
宇佐見さん 僕らも迷っています。これまでも子どもの病気など事情がある時は、「今日は家で仕事をします」と申請すれば可能でした。ですから、「今日は出社しないと仕事が進まないな」と自分で判断したら出社する、ということでもいいのかなと思っています。そのあたりは社員を信頼しています。
パパがもっと育児に関われるようになる方法は?
―世の中のパパがもっと育児に関われるようになるには、どうしたらいいと思いますか?
宇佐見さん パパは、ママに比べてコミュニティーが不足しているので、それが大きな障壁になっているのかなと思います。ママ同士はコミュニティーが充実していて、得られる情報も多いですよね。僕らはそこにはなかなか入れてもらえないので、たとえば会社を挙げてパパコミュニティーを作るのもいいかなと思います。僕らも、今はコロナでやっていませんが、以前は「パパ会」というのをしていました。
―パパ社員が集まるんですか?
宇佐見さん 僕らの場合は、会社だけに限らないようにしてました。少しでもコミュニティーを広げるためです。それと、パパと子どもで遊ぶことによってママをフリーにするというのも、パパ会の目的の一つです。
上野さん 東京でパパ会をしているのはよく聞いていて、うらやましいなと思っていました。僕の周りにはIT系のパパ友が少ないので。それでも、僕も異業種のパパ友を作って週末に集まって、会社と関係ない話をするといったことはしていましたね。
宇佐見さん 今の日本の社会は、妻の方が時短勤務となりがちで、子どもを見る時間も女性の方が多いと思います。我が家もそうですし、うちの会社でもそうです。その是非は置いておいて、子どもと過ごす時間がママより少ないのは、パパにとってネックだと僕は思っています。どうしてもママに勝てない。ですから、仕事が休みの日はパパ同士で協力して子どもたちをみるというのはいかがでしょうか。自分たちの株を上げることができますし、ママに自分だけの時間をプレゼントできますよ。
編集後記
「フルリモートは過程が見えないから、結果でしか評価されない」。フルリモートのようなかたちで仕事をしている私にとって、背筋が伸びる言葉でした。フルリモートは場所に縛られないというメリットがありますが、厳しい面もある。そんなことを再認識しました。
そして、パパ会!子どもにパパの存在感を示せる絶好の機会ですし、パパ同士での情報交換も楽しそう。ママも自由時間がとれて、いいことずくめですね。素敵なアイディアありがとうございました。
職業:株式会社マカルーデジタル 取締役
お子さんの年齢:4歳
居住地:東京都