「働きやすい企業を増やし、世の中をハッピーにする」をミッションとする株式会社ワクフリ。同社では、在宅勤務制度を取り入れているほか、フルリモートのママ社員の採用にも力を入れています。
代表取締役・髙島卓也さんにフルリモートママ社員の採用のきっかけや働きやすい制度を、ママ社員のIさんに実際の働き方についてお聞きしました。
週5日フル出社から、「明日からフルリモートやります」
―御社の事業内容を教えてください。
髙島さん:中小企業のあらゆる業務課題を解決し、業務改善をコンサルティングする事業です。ただITツールを導入するだけでは効率化につながらず、逆に非効率化する場合もあります。そうならないように弊社が伴走し、プロジェクト企画〜プロジェクト実行〜定着までをクライアント企業の業務改善の担当として取り組みます。
こうしたコンサルティングを柱に、派生している事業がいくつかあり、今期力を入れているのがクラウドサービスを利活用できる人材を育てる研修教育事業”ワクデミー”です。コロナ禍で在宅勤務を余儀なくされた方、地方移住を考えている方などに、在宅で企業のバックオフィス業務を担えるスキルを身に着けてもらう教育事業です。こちらの講座を受講した方にはクラウドサービスコーディネーターの資格を授与しています。
―働きやすい環境への取り組みについて教えてください。
髙島さん:在宅勤務ができる環境でどこで働いてもいいという環境が整っています。完全在宅のママさんメンバーや遠隔地のメンバーもたくさんいて、いろんなスキルや経験を持った人が集まっています。
メンバー全員、人に仕事を押し付けず助け合える、優しい人がそろっていて、会社が掲げるミッション「働きやすい企業を増やし、世の中をハッピーにする」に対し意欲的に動いてくれています。
―リモートワークを始めたきっかけはコロナですか?
髙島さん:そうですね。第一回目の緊急事態宣言が出る手前、2020年の4月1日からフルリモートにしました。それまでは週5日フル出社していたのを、「明日からフルリモートやります」と、前日3月31日の夜に僕がチャットをして。
―社員の皆さんから、「えっ、いきなり?」みたいな反応はなかったですか?
髙島さん:それは、ありますよね(笑)。でも、できなくはないだろうなと思いました。というのも、当社の業務はクラウドサービスで行っていてペーパーレスなんです。お客様との打ち合わせもオンラインで行えば大丈夫かなと考えたんです。
で、やってみたら課題は色々と出てきたので、半年間くらいかけてその課題を潰していきました。
―課題というのは?
髙島さん:誰が何をやっているか把握しにくいことです。社内で同じ空間にいると、なんとなく目の前の人がやっていることがわかる。でも、それは「知ってるふう」だったんです。僕らはもうちょっと情報共有ができていると思っていたんですが、実際に在宅勤務が始まると、誰が何をやっているかわからなくなってしまいました。
スケジュール管理はやっていたけれど、タスク管理はあまりできていなかったんですね。それで、朝会と夕会を毎日やることにしました。朝会でその日やることを一人ひとり確認して、夕会でどこまで進捗したかを報告します。これにより、みんなが何をやっているか把握できるようになりましたし、コミュニケーションがスムーズになりました。
―在宅勤務を導入したことで、今までなんとなくやっていたことが、社員同士で見えるようになったんですね。皆さんフルリモートなんでしょうか?
髙島さん:まん延防止や緊急事態宣言が出ている期間は、フルリモートにしています。それ以外のときは週1回出勤日を設けていて、遠隔地のメンバー以外は全員出社です。それ以外の日も、家だと仕事が進まないという人は出勤してもいいことにしています。Iさんはフルリモートのママ社員なので、不定期で来てくれています。
―フルリモートのママ社員について教えてください。
髙島さん:きっかけは、再就職を希望する子育て中のママと企業をマッチングするイベントに参加したことです。それがフルリモート勤務での採用が前提だったんです。それまで当社はフルリモートの採用はしていませんでした。当社の取締役からイベントに出てみないかと話があり、それほど期待せずに参加してみたら、Iさんのプレゼンがおもしろすぎて。会社でやろうとしていることと、Iさんのやりたいことやスキルがマッチしていたので、イベントの2日後には採用を決めました。ほかに、このイベントで出会ったもう一人のママも1週間後に採用を決めました。
―今後もママの採用を積極的にしていくお考えはありますか?
髙島さん:それはすごく思っています。2人とも面談時に、結婚や出産を機に仕事ができなくなったけれどとても働きたかったと、同じことを話していました。2人ともブランクがある状態で入社しましたが、非常に能力が高いんです。こんなに良い人材が結婚や出産で外に出られないと言うだけで働けずにいたんだなと実感しています。他にもそういう方がいっぱいいらっしゃるでしょうから、ぜひ採用したいですね。
―御社ではどのような人材を求めていますか?
①コンサルタント補助メンバー:ドキュメントの作成などが得意な方
②クラウドサービスの設定業務:内容を理解し、正しく設定していける方。(必要なのはPC操作スキルくらいです)
③その他、ワクフリの事業にプラスになるようなスキルを持ったような方。
④これはマストですがワクフリがやっていることへの興味共感が持てる方
―先におっしゃった、「人に仕事を押し付けない」「助け合う」「優しい」など、人柄もポイントですか?
髙島さん:中小企業の業務課題を解決して働きやすい環境を作りたいというワクフリのミッションは、弱者視点だと思っています。ですから、人柄がいい方を採用してきたというより、その視点を持てる人たちはいい人が多いということだと思います。
フルリモート勤務でやりたい仕事に出会えた
―御社に入社されたきっかけを教えてください。
Iさん:先ほど髙島が言った再就職支援イベントのチラシを、息子が学校からもらってきたんです。コロナ禍ということもあり就職活動はしていませんでしたが、フルリモートで「ママ」が対象だったのでいい機会だと思って参加しました。ワクフリは、私がやりたいことがミッションになっている会社だったので、働きたいと思いました。
現在は週5日7時間勤務ですが、月曜日は子どもの習い事の都合で、5時間勤務にしてもらっています。
―育休や産休中のブランクはありましたか?その間、どんな想いを抱いていましたか?
Iさん:妊娠から3年は育児に専念し、その後プログラマーのパートを2年ほどしましたが、子どもが年長の時に小学校準備などで多忙になるため退職しました。
仕事をしていない間は、育児と両立したどんな働き方ができるか、どんな強みを生かせるかを考えていました。正直コロナが流行してからは「就職」は諦めていたので、プログラミング教育もできるベビーシッターの道も考えて保育士資格をとったりもしました。
―復帰後に苦労したことはどんなことですか?
Iさん:特に苦労はなかったですが、離職中は情報(旬な業界のニュース)のインプットが不足していることに気がつきました。それなりにニュースは見ていたつもりでしたが、漠然と情報を得るのと顧客に提供できそうだという視点で得る情報は密度が違いますから。
―妊娠・出産から復職というご自身の経験が、今のお仕事にどのような影響を与えていますか?
Iさん:弊社は業務の効率化やDXのサポートをしています。実際に新生児育児中のお客様が業務改善によって退職しなくてもいい環境を構築できましたし、属人化の排除や業務フローとマニュアル作成によって障がいのある方も働きやすくなったというお声をいただいております。
世の中が変わってきたとはいえ「育児中の母親」はまだまだビジネスでは”弱者”な面もありますが、弊社のミッションである「企業の業務改善を達成し、働きやすい企業を増やして世の中をハッピーにする」を自分自身の経験から「布教」できるのではないかと思っています。
―現在の働き方のメリットと課題について教えてください。
Iさん:急な予定変更によって業務が中断されないことです。今までは子どもが熱を出したり学校が臨時休校になったりした場合、会社に遅刻したり仕事を休まざるを得ませんでしたが、私が家にいるので子どもを見ながら仕事ができる点が助かっています。予定が入ったら休んでいいとは言われていますが、実際のところ休む必要性がありません。休まない一方で、休憩時間をお迎えなどの中抜けに使っており、仕事と育児を効率的に行えています。
また子どもに私の働いている姿を見せられることもメリットです。親の仕事を子どもに見せることも教育の一つかと思っています。息子は「将来は発明家になってママと同じおうちで仕事する」と言っているので将来が楽しみです(笑)。
弊社では育児中の社員に限らずワーケーションも許可されているので、長期休暇や実家に帰省しながら仕事ができる点も良いと思います。
課題は強いて言えば、業務時間外でもスマホに顧客からの通知が来るので、気になるとつい返信してしまうところです。もちろん通知を切っていいし返信しなくてもいいのですが、時短なので相手の業務時間に合わせてしまうことがあります。私自身は元々ワークアズライフの考え方なので全く苦ではないのですが、自己管理は必要だと思います。
―今後どんな自分になりたいと思っていますか?
Iさん:人と人、人とシステム、人と会社をつなぐことができるハブのような人になりたいです。
髙島さん:保育士の資格を持っているのは初めて知りました。もし託児所を設置したらぜひお願いします(笑)
―そういった将来像もお持ちなんですか?
髙島さん:今はシェアオフィスに入っていて、快適ではありますが、やはり自分たちが自由に使えるオフィスを持ちたいという思いはあります。社員にとって居心地がいいオフィスづくりに役立つことになることなら、託児所に限らず考えていきたいですね。
―在宅勤務が進んでもオフィスは持ちたいというお考えなんでしょうか?
髙島さん:コロナ禍になったときは100%オンラインでいいんじゃないかと思い、シェアオフィスの縮小を検討していた時期もありました。結果的に縮小はせず、逆に拡大しました。やっぱり時々は顔を合わせないと駄目だなと思ったんです。仕事の話はオンラインで完結するんですよ。ただ、一つのミーティングが終わったら、また次のミーティングがオンラインで始まっていくという……。これが取引先との対面のミーティングなら移動というスキマ時間がありますし、社内で仕事していたら空いている時間に隣の人と少ししゃべることもできます。オンラインだと雑談をするタイミングがなかなかないので、仕事以外のパーソナルなところを見ていくのが難しいなと。ですから、会える場所を会社が用意しないといけないなと感じています。
はたママの読者へメッセージ
―はたママの読者へメッセージをお願いできますか?
Iさん:ブランクがあると、こんな自分だと働けないんじゃないかとか、雇ってくれるだけでいいんじゃないかと思うことがあるかもしれませんが、そんなことはありません。
ワクフリと出会ったイベントで言われたのが、今までは一つの企業に入ってキャリアを積んで出世するのがスタンダードだったけれど、今はいろんな経験をして複合的なキャリアを積む時代ということ。そのときはキャリアに関係ないと思えても、最終的に結びつくということもあります。ですから、たとえ一つのキャリアが途絶えても、そこからまたいろんな経験を積み重ねていけば、いつか自分のやりたいことと社会を結びつける仕事に巡り合えると思います。
髙島さん:今は、在宅勤務ができる環境を整備している会社も増えているので、少し視野を広げれば、子育てなど制約があっても働ける会社はあると思います。また、自分には大した経験やスキルはないと思っている人もいるかもしれませんが、Iさんが言ったように、無駄な経験はありません。ぜひ自分がやってきたことを自信持って表に出してみてください。「そんな経験をもっているならぜひ話をしてみたい」という企業と出会えるはずです。
株式会社ワクフリ
https://wakufuri.com/
編集後記
とくに就活はしていなかったIさんが、たまたまチラシを見て応募したイベントで、「これ!」という仕事に出会えたこと。どこにきっかけがあるかわからないですね。そして、そのチャンスを逃さず手に入れることができたのは、常に学びを続けていたからなんだろうなと思いました。
はたママへのメッセージで話された内容をはじめ、髙島社長とIさんが同じ価値観を共有していることが感じられるインタビューでした。会社のミッションに共感できるかどうか、それが大事なんですね。
職業: 業務整理コンサル
お子さんの年齢:8歳
居住地:福岡県