卵子凍結という可能性を福利厚生に。これからも、『公私融合』をして前向きで可能性に満ちた社会を創りたい

株式会社サニーサイドアップグループは、東京都渋谷区に本社を置く日本のPRコミュニケーショングループ。PR事業を始め、デジタルやクリエイティブ事業、PR発想を軸としたあらゆるコミュニケーション手法を用いて、さまざまな課題を解決しています。
今回は同社で執行役員 社長室室長兼ソーシャルグッド推進室室長、そして株式会社グッドアンドカンパニー 代表取締役社長 を兼務する谷村 江美さんにインタビュー。谷村さんが様々な企画を通して女性のヘルスケア全体の啓発をしている背景や育児とキャリアのバランスについて伺いました。

谷村 江美(たにむら えみ)さんのプロフィール

職業:株式会社サニーサイドアップグループ 執行役員 社長室室長兼ソーシャルグッド推進室室長
株式会社グッドアンドカンパニー 代表取締役社長
お子さんの年齢:11歳、7歳
居住地:東京都

谷村さんが目指すもの。女性のヘルスケアを啓発する


➖担当されている業務内容を教えてください。
株式会社グッドアンドカンパニー代表取締役社長(サニーサイドアップグループのグループ会社)としては、2021年より企業横断型事業女性活躍デザインプロジェクトW societyの主宰として活動中。
経団連や東京都・渋谷区に後援いただきながら、セミナー・イベント・オンラインスクールなど 様々な企画を通して下記のような女性のヘルスケア全体の啓発を目指しています。

➖女性のヘルスケアに関するセミナー、卵子凍結を福利厚生に取り入れた経緯を教えていただきたいです。
このW societyが発足したのは去年の2021年9月です。
誰しも、自分らしく生きたいという想いを持っていますよね。しかし、女性の場合、出産など身体のタイムリミットがある中で漠然と不安がありながらも、実際は自分自身の身体のことをよくわかっていない方は多いのではないでしょうか?
正しい知識を得ることで、女性にとっての生き方の選択肢もより自由に広げられるのではないかと思ったことが、プロジェクトを発足したきっかけです。また、少しでも多くの女性たちに、ヘルスケアの重要性を知ってもらうために、私たちの強みであるPRコミュニケーションの力を活かせるのではとも考えました。
サニーサイドアップに在籍する女性社員は60%以上で、代表も女性です。ダイバーシティだから、女性活躍の時代だからというわけではなく、自分たちが過ごしやすい、居心地がいいといった雰囲気やカルチャーが自然と育まれてきたと感じます。そういう中で、2014年にアメリカのIT企業がシリコンバレーで卵子凍結の補助というのを企業の福利厚生として始めた、ということを耳にしました。そこで、卵子凍結とは一体どういうテクノロジーなのか、女性にもたらすメリットは何なのかを会社で調べ始めるようになりました。そして翌年の2015年に、おそらく日本で初めて卵子凍結を福利厚生に導入しました。

➖現代の女性について伺いたいです。「自分を大切にしている」人は多いでしょうか?女性たちがどんな風になればいいと考えていますか?
多様性とは、周りが受け入れる、周りを受け入れるというだけではなく、自分自身を受け入れ、自己を容認するということが大切ではないでしょうか。
ただ、キャリアの途中で子どもを生み両立することなど、数々の制約を感じるステージもありますよね。明確な解を持っているわけではありませんが、楽ではないけれど、社会の中で誰かの役に立つことを目指そう、そのための選択肢となる道を閉じないようにしよう、と考えるようにしています。そのために、いかに自分らしく力を発揮できるのかを考えてみるのはどうでしょう。無理を重ねると続きませんから、私自身も自分なりのバランスを模索し続ける日々です。
優先順位は人によって違う。私は髪を振り乱して両立してきましたが、一緒に働く女性たちに同じことを強いたいとは思いません。一人ひとり、価値観も時間の使い方は違うから。既成概念に囚われることなく、自分のライフスタイルに誇りを持ち、人生を作ることができる時代になったからこそ、自分と誰かと生き方を比較して感じるギャップで苦しむ女性が少なくなればいいと思っています。

➖キャリアを継続させたいし、育児もしてみたい。けれど、いつ出産すべきか悩む女性も多いと思います…。
私は2人目を出産したとき、よりその気持ちになりました。ある婦人科の先生とお話ししたのですが、2人産みたいと思う方が産めると、日本でも危惧されている出生率(合計特殊出生率)が上がるようです。妊孕性には時間の限りがあるので、ライフデザインを描いた方がいいかもしれません。私の子ども達は4歳差ですが、1人目を経験しているからこそ、2人目の出産後にどういうアクシデントが起きるのかをリアルに想像することができました。ただ、それでもその世界に飛び込むしかないという感じで進みました。
パートナーに出会う時期、出産を考える時期は一人ひとり違います。ただ、体のメカニズムを知っておくことと、知らないでそのまま過ごしてしまうというのは大きく違うのでは。わかった上で、自分の中で選択を積み上げていくことができたらいいなという想いで女性のヘルスケアの啓発をやっていますし、私が直接触れ合える、そういうステージにいる女性たちには丁寧な対話をしていきたいなと考えています。
新たな世界に飛び込むことは決して簡単なことではないけれど、10年前に比べると明らかにサポートは向上していますし、社会や周囲の共感性やサポート力は向上していると思います。環境を憂うより、自分が本当は何を実現したいのかを考えること。私は企業側の視点も持ち合わせなければいけない立場ですので、できる範囲で多様なメンバーの両立をもっとスムーズにできるような企画も練ってみたいとも思います。
昔の女性は、何かを一つだけを選択するという“or”という状態でした。仕事を諦めて育児に専念するということがメインストリームだったとすると、今は望めばやりたいことを全て実現できる“and”を選択できるチャンスが増えてきました。そのサポートになるような企画を生み出し、社会に発信することが私のライフワークだと思っています。

◆女性活躍デザインプロジェクトW society

・2021年9月W society始動
・2021年10月eggweek
AMH検査の啓発プロジェクトキャンペーンをスタート。
W societyアンバサダーには柔道家・阿部詩さん、モデル・島袋聖南さん、モデル・長谷川ミラさんに就任いただきました。野田聖子大臣からもコメントをいただきました。
・2022年3月 W week
国際女性デーに合わせて女性と社会に“気づき”を与えるキャンペーンをスタート。
福田萌子さん(スポーツトラベラー)、潮田玲子さん(一般社団法人Woman‘s ways)、山本未奈子さん(Be-A Japan代表取締役CEO)、長谷川ミラさん(モデル)、 川村真木子さん(実業家)に登壇いただきました。
・2022年5月#私を知ろうプロジェクト渋谷
渋谷区と一般財団法人渋谷区観光協会の後援のもと、渋谷区クリニックと連携しセミナーを実施。AMH検査を受けられるチケットも販売。
・2022年6月 W school
経団連後援のもと、「女性のカラダとヘルスケア、それらとキャリアとの両立に関して知り、学ぶ機会」を提供するライフデザインセミナーをスタート。社員一人ひとりの“Well-Living”をサポートする福利厚生として、法人単位でのお申込みも可能に。
・2022年10月#私を知ろうプロジェクト名古屋
名古屋市の後援のもと、「D&I宣言」として女性活躍を最優先テーマに掲げる豊田通商株式会社とともにセミナーを実施。名古屋市副市長杉野みどりさんにも登壇いただきました。

◆サニーサイドアップグループの「Dear WOMAN制度」

サニーサイドアップグループ独自の福利厚生32の制度の一つです。
・2015年7月 「Dear WOMAN制度」を新設。「卵子凍結」費用補助を導入。
       〇卵子凍結から保存までの費用総額の30%を費用負担
       〇卵子凍結採取にかかった費用の30%
       〇凍結保存にかかる月額保管費(10年間)の30%
・2022年4月 「AMH検査」の費用補助を追加導入。
       〇AMH検査にかかる費用の約60%を費用負担
・2022年7月 「AMH検査」の費用補助対象者を男性メンバーの家族やパートナーにまで拡大。「精液検査」の費用補助を追加導入
       〇精液検査にかかる費用の8000円を費用負担

株式会社サニーサイドアップ https://www.ssu.co.jp/

株式会社グッドアンドカンパニー https://www.goodandco.jp/

谷村さんの育児とキャリアについての考え方


➖育児休暇を取得されましたか?
ほとんど取得せずに、リモートなどをうまく活用しながら両立しました。
1人目の時は多少取得したような、そんな記憶が…(笑)。

➖取得されてどう感じられましたか?
休むということに対して身も心も慣れずにいましたが、育児は育児でてんやわんやだった記憶がありますね。
「絶対にお迎えに行かなければいけない時間の制限との戦い」
「最初に職場を出なければならない心苦しさとの戦い」
「仕事と子育ての脳内バランス」
「子どもの体調不良による急なお迎え、休暇」
「雨が降るだけで、一瞬で崩れる様々な段取り」
両立には様々なドラマがありますよね。

➖10年くらい前の働くママを取り巻く環境はどのような感じだったのでしょうか?
その当時は、私のように働くママが社内にあまりいなかったように思います。私は仕事がしたいと想いがあり、その想いを汲み取ってもらい、基本的には在宅で仕事をさせていただきました。
出張や来客、社内でのミーティングの時は子連れで出社していました。
シッターさんを活用することもありましたが、利用に関して自分自身にバイアスをかけてしまい、子どもへの申し訳なさや罪悪感がありました。けれど、子育てしながら働きたいと言うのは普通の発想だと思うし、仕事ができる環境をシッターさんなどのプロの手を借りることで成り立たせることに、罪悪感を持たなくて良いと思いますし、私自身も両立を続ける中で気持ちが変わっていきました

会社の子育て制度について


➖育児休暇以外に、子育てに伴い取得した会社の制度等がございましたら教えてください。
「ファミリーホリデー制度」
家族の記念日などに取得できる有休とは異なるお休み制度
こちらを活用し、平日のテーマパークを子どもと満喫しました。

「認可外保育園の一部補助」
会社が契約している福利厚生サービスによる一部補助

認可外保育園に通わせていましたが、を利用しました。一部とはいえとてもありがたかった記憶があります。

➖利用しなかったが、良いと感じている会社の制度等はありますか?
「サニーベイビー制度」
社内結婚だと、二人目の出産から100万円が支給される驚きの制度
私は社内結婚ではなかったのですが、ただただ羨ましく思っていました(笑)。実際に取得しているメンバーもいます。全社の朝礼でも、お祝いごととして発表していますので、会社がウェルカムムード。取得する人はある意味ヒーローかもしれません。
社内結婚じゃなくても、私は結構会社に子どもを連れていくことも多かったのですが、社長をはじめ皆さんにとても可愛がっていただきましたよ。
育休中で顔を見せに来てくれるメンバー、辞めてしまってからも赤ちゃんと一緒に来てくれる人もいます!

勤務状況について


➖現在の働き方のメリットと課題について教えてください。
ある程度自分でスケジュールを管理することができるようになりましたが、両立11年とはいえ、時間に制限のある働き方は、仕事人間のわたしにとっては非常に大変です。ただ、公私混同ではなく、
「公私融合」という発想で、無理やり切り分けをしないようにしています。あえて自分から、能動的に境界線を引かないという考え方は私の生き方や働き方にはすごくフィットしています。
オンラインなどを活用しながら、できる限り支障をきたさない程度に、隙間の時間や休日などもうまく活用しながら両立する術を、段々と習得できるようになったと思います。

「オン・オフ」のスイッチを入れてしまうと、仕事モードに戻る時がとても大変。両立は時間の制限ができてしまいます。どういう状況にあっても、解決できることはやれるときにやるようにしています。
「休みだからやっちゃいけない」と考えることが私にとってはストレス。自分の中でできると判断したなら、垣根を撤廃して対応しよう仕事と育児をやればいいという考えに至りました。

➖お子さんが成長されて、子育ては楽に感じるようになりましたか?
年齢が上がると新たなステージの大変さはあるかも。
幼児期に保育園で朝から晩までで預かってもらっていた時は融通が利いていたけれど、小学生になると長期休暇やいきなり授業のコマ数が変更、行事の参加…、その都度スケジュールを見直さないといけませんよね。子どもたちは4歳差なので、時間の過ごし方が全く違う。上の子が塾に行っている間、下の子にご飯を食べさせます。それが終わって、お迎えに行って、またご飯…と。
子どもは成長しているので、自分でできることは1人でやってちょうだいね!と日々声掛けをしています。ただ、サポートをしないといけない&したい場面は成長しても必ずあります。となると、私1人の時間、というのは作りづらいのですが…。それでも、必ず1日の終わりは来るので!

➖自分の時間はどうやって作っているのでしょうか?
朝は早いので、家族を送り出した後にある程度自分がやりたいことを詰め込んだりしています。ルーティーンがあって、自宅でトレーニングを。その後音楽を聴きながら支度をして出かけています。

➖今後のご自身のキャリアをどのようにしたいと考えていらっしゃいますか。
せっかく子どもたちとの時間を削り、必死に両立を積み重ねてきたのだから、「W society」しかり、自身の仕事を通じて、今よりも前向きで可能性に満ちた社会を創れるような、そんなプロジェクトを世の中に産み落とし、継続していきたいですね。

代表としては、まだまだですね…。仕事は生き物ですので、一定ということはない。新しいチャレンジがチャンスとしてどんどん出てきますし、新しい方との出会いや考えに触れることも。世の中にまだないことを企画する、アイディアにする仕事をこの一年やらせていただき、喜びと苦しみを両方一挙に経験させてもらいました。ここからはもっといろんな仲間を増やしながらスムーズに本質を目指して成熟させていきたいです。

はたママ読者へのメッセージ

働くママは時間にかなりの制限があり、好きなようにストレスを発散することはなかなかできませんよね。だからこそ、隙間の時間でも自分の好きなことを工夫しながら楽しむのはどうでしょうか。過去を悔やむことはあったとしても、子育てをスタートさせてから子どもを生まなければよかった、と考えたことが一切なかったことに今さら気付きました。11年間のてんやわんやな自己流の両立でも、真っ直ぐに成長している子どもたちの姿を見ると、心から良かったと実感しています。

株式会社サニーサイドアップについて

株式会社サニーサイドアップの社内の様子


➖御社の事業内容を教えてください。
戦略PR、PR視点でのプロモーション、スポーツマーケティング、アスリートマネージメント、SDGsやソーシャルアクションの推進など。近年では、COVID-19による新しいライフスタイルなど、コミュニケーションの変革に伴い、マーケティングからソーシャル分野まで幅広いプロジェクトに取り組んでいます。また上場企業として、SDGsが採択される以前から、社会課題解決を目的とした参画型プロジェクトを多数手がけており、SDGsへの取り組み、ソーシャルグッドな取り組みを積極的に行っています。

株式会社サニーサイドアップのユニークな社内制度について

➖働きやすい環境への取り組み、それに対する社内での反応、また、現在感じている課題がありましたら教えてください。

新しい時代にあった快適な職場環境づくり
中長期的な企業成長とメンバー数の増加を見据えつつ、新しい時代に即した新しい働き方を実践するために、2020年11月にはコロナ禍において価値が再定義されつつある「オフィス空間」においても、大規模リニューアルを実施しました。時代と共に変化する価値観や時流を捉えつつ、メンバー一人ひとりに合わせた柔軟で多様な働き方ができる環境を整えています。

新オフィスの中心には”セントラルキッチン”を配置されています。

“新たなコミュニケーションやアイデアを生み出す場”として、新オフィスの中心には”セントラルキッチン”を配置。メンバーが安全にオフラインで交流できる場を創出。さまざまな人やアイデアが集まるカルチャーづくりにも貢献しています。

また、ニューノーマルな働き方に対応したリノベーションに加え、いち早く新入社員歓迎会のオンライン開催や予防接種休暇を実施。テレビをはじめとする様々なメディアでも取り上げていただきました。

働く環境は社員の事情に合わせてカスタマイズできる


➖在宅の割合は1、2割ということですが…。
わたしたちの部署では基本的には、事前に報告すると言うことを前提に、本人のその時の事情に合わせて選択してもらうようにしています。週に一度はface to faceで打ち合わせをするという機会は持っています。社員1人ひとりみんな違う事情をもっているので、個人が働きやすいようにカスタマイズしてもらっています。グループとしても、リモートワークを推奨していますが、セントラルキッチンの存在なども大きく作用し、出社率はとても高くなっています。

➖ユニークな制度が出来上がった背景を知りたいです。
弊社は設立して38年目になります。20008年に上場を果たして、さらに仲間が増えていくといった状況になりました。そこで、もっと社員のみんなによるみんなの制度があったらいいよね、ということで社名であるサニーから語呂合わせで32となりました

「32の制度」は「たのしいさわぎをおこしたい」のスローガンをもとに、メンバー一人ひとりが充実した働き方、そして生き方ができるよう、2011年に制定された独自の福利厚生です。「たのしいさわぎ創造⽀援」「恋愛勝負休暇」「失恋休暇」「誕生日休暇」「幸せは歩いてこない」など、弊社らしさが盛り込まれた制度で構成されています。時代の潮流にあわせて適宜アップデートし、「一人ひとりが自分らしく働ける環境づくり」を推進しています。

2015年に、日本企業としていち早く「卵子凍結から保存までの費用助成」をスタートしました。2022年のアップデートではDear WOMAN制度にプレコンセプションケアとして「AMH検査費用補助」を追加導入。。また、男性に向けた「精液検査」の費用補助も追加。働き方だけでなく生き方の選択肢を増やすことで、より安心して自分らしい生き方ができるようにバックアップしています。

➖社員ができるだけ多くの選択肢を持てるよう、福利厚生を充実させているのですね。
社員一人ひとりが自分のスタイルで、自分らしく働けるためには、時代のニーズに合わせて柔軟に更新される必要があります。性別や年齢を問わず、誰もが働きやすい環境を整えることによって、社員のウェルビーイングを目指しています。

編集後記

社員一人ひとりの充実した働き方をバックアップする32の制度は、「推し」の恋愛・結婚報道などによる失恋!にも対応しているそう!心と身体を大切にする風土が根付いていますよね。
そんな遊び心も持ち合わせ、かつ女性の身体について自分自身と他者が分かり合える機会を啓発するW societyの発足など、社員の「生」をあらゆる方面からサポートしているのが素晴らしいと感動しました!