発想を変えて、理想を手に入れた。 幼稚園ママ時代に見つけた新しい働き方~株式会社トークナビ・猪崎 新奈さん

「声で、未来を変える」をビジョンに、2015年に地方局アナウンサー出身の女性代表が起業した株式会社トークナビ。 コロナ禍前からリモートワークを活用し、結婚や出産などで離職した女性アナウンサーが「キャリアも、 育児も」希望を叶えられるような働き方を実現しています。

福岡から在宅で活躍するママアナウンサー猪崎新奈さんもその1人。「数年前には想像もしていなかった働き方」という猪崎さんに、現在の働き方や想いを聞きました。

ライフステージに合わせた働き方ができる株式会社トークナビ

子育てを優先しながら、やりたい仕事ができている

―トークナビはどのような会社ですか?

トークナビは地方局アナウンサー出身の代表、樋田かおりが、2015年に起業した会社です。全国各地に、私のように結婚や出産で離職した女子アナたちを中心に約70名が在籍しており、リモートワークを活用して講師業、広報代行業、人事代行業を行っています。

ー全員がアナウンサーの会社なのですね!設立の背景を教えてください

会社設立のきっかけは、代表の樋田が青森放送を退社して再就職先を探していた頃、結婚や出産を機にいったん会社を離れたものの、その後、仕事復帰を望んでいる女子アナが多いことを知ったことです。

局アナを経験した樋田自身も「アナウンサー30歳定年説」を感じることが多く、「アナウンサーや女性のセカンドキャリアを支援したい」と考えたことが起業の動機だったといいます。

株式会社トークナビ

仕事で子どもとの時間を削ることに葛藤

トークナビの猪崎 新奈さん
猪崎 新奈さんのプロフィール

業務内容:研修講師(話し方研修など)、人事
働き方:フルリモート
お子さんの年齢:8歳、6歳
居住地:福岡県

ー早速ですが、猪崎さんがトークナビに入ったきっかけを教えてください

私は大学在学中にラジオ番組のオーディションに合格し、RKK熊本放送でパーソナリティを務めるなどラジオをメインに活動してきました。その後、結婚・ 2人の子どもの出産 などで専業主婦として 5 年過ごした後 、 幼稚園ママ時代に仕事を再開しようと、ナレーションや司会の仕事を受け始めました。

しかし、仕事は常にあるわけでは ありません。 また、司会は土日の仕事も多く、子どもたちと過ごす時間を削ることに葛藤がありました 。 「 “声”の仕事で もっと社会 と関わりたい」という気持ちと、 「今は子育てを優先したい」 という 2 つの 想いに揺れていた頃、トークナビに出会いました。

ートークナビではどんなお仕事をされたのでしょうか

2019 年 の入社後は 週に 1 ~2 日 程度 、 アナウンサーの取材スキルを活かし、 中小企業の 広報活動を代行する 広報アナウンサーとして仕事を始めました。 さらに、子どもの成長に合わせて 働く時間帯を調整 し ながら 、 オンライン研修講師の仕事にも挑戦しました。

トークナビでは入社時の研修や 月 1~2回の全社ミーティング以外は、1人ひとり相談して働く時間を決めるため、育児中でも無理なく続けられました。

ーアナウンサーのスキルを活かし、在宅で働けるお仕事だったのですね

業界的にアナウンサーがママでも働ける仕事が少ないのが現状です。でも、現場でマイクを持って話すことだけが、アナウンサーの仕事ではありません。こんなふうに発想を変えたことで、子どもとの生活は大きく変えないまま、仕事を続けることができました。

自分が社会との関わりを求めるなら、子どもと離れて毎日がっつり働くしかないのかと思っていましたが、数年前には想像もしていなかった働き方で今、理想が叶っています。

リモートワーク組織へ飛び込んで感じた「近未来」!

全国の仲間とつながるトークナビのオンライン会議の様子

ーリモートワークの会社に入って、戸惑いはありませんでしたか?

専業主婦からいきなりリモートワーク組織での仕事に飛び込んだので、「急に近未来に来た…!」と驚いたことを覚えています。最初は「会ったこともない人と一緒に働くなんて…」と、とても戸惑いました。でも、Zoom画面に10人以上並ぶ同僚の姿を見て、徐々に「同志」としての一体感を感じるようになりました。

ー「同志」と感じたということ。一緒に働く方も女性やママが多いのでしょうか?

トークナビで働く女性の約7割はママアナウンサーです。代表の樋田も、子育て中のママ社長です。みんな、目指す方向性も、両立の悩みも同じでした。一歩先を行く仲間を見て、私自身、目標を持つこともできました。

仕事は福岡の自宅で1人パソコンに向かって行いますが、孤独感はありません。社内で実際に会ったことがあるのは2人くらいですが、仕事はもう4年目です。全国どこに住んでいても、人とつながり、同じスピードで走っていけることに、やりがいを感じます。

子どもたちに「お帰り」と言える環境。「小1の壁」の心配もなし

仕事を終えると、学校から帰ってきた子どもたちの話を聞く

ーお子さんとの生活はいかがですか?

私の子育ての理想は、学校から帰ってきた子どもを「お帰り」と出迎えられることでした。今、その理想が叶っています。しかも、仕事を続けながら。今の環境は私にとって120点、いえ、300点くらいで、満足しています。子どもたちは小3、小1になりましたが、世間で言われる「小1の壁」(※)も感じませんでした。

(※)保育所に比べて学童保育の開所時間が短い、帰宅後に宿題を見る必要がある等から、子の小学校入学を機に育児と仕事の両立が難しくなること

在宅仕事ならではの悩みは、こんな工夫で乗り切る

ー在宅で経験を活かせる仕事に就いたことで、仕事も子育ても理想を叶えることができたのですね。逆に、在宅仕事ならではの悩みはありますか?

研修講師の仕事は平日昼夜問わず入ることです。そこで、家族の協力が欠かせません。研修講師の仕事が学校の下校時間に重なるときは、子どもたちは「鍵っ子」のように、自分で鍵を開けて家に入ります。

そして、仕事部屋から聞こえる私の発声練習の声などで「ママはお家で仕事の時間」と自然と感じ取ってくれ、リビングで本を読んだりして待っています。研修が夜にある時には、夕食の時間を早めます。夫が在宅勤務をして夕方以降の家事をしてくれることもあります。

ー猪崎さんの家庭では「お家で仕事をするママ」の姿が生活の一部となり、ご家族の協力体制ができあがっているのですね!

トークナビで広がった講師業という新たなキャリア

在宅での仕事風景。トークナビではオンライン講師を務めている

ー今、仕事で感じているやりがいや今後の目標について教えてください

実は、私はもともと「講師の仕事は自分には向いていない」と思っていました。でも、トークナビで講師業にチャレンジしたところ、大きなやりがいを感じました。たとえ数時間であっても、参加者の成長が感じられるのが喜びです。

ー子育てを優先する働き方の中でも、組織で働くことで、新たなキャリアを広げることができたのですね。

はい。今では企業向けだけでなく、小学生向けのオンライン話し方教室でも講師を務めています。これからも、講師としての仕事を頑張りたいと思っています。

「道は1つじゃない」。ライフスタイルに合わせて仕事をDIYしていく時代に

在宅での仕事風景。1人でも孤独感はない

ー結婚や出産で離職した後、「働きたいけど働けない」と悩む女性はたくさんいると思います。猪崎さんもそのお1人であったと思いますが、今、どんな想いをお持ちですか?

道は1つじゃない、と感じています。これからは、会社に合わせるのではなく、ライフステージに合わせて、その都度DIYのように働き方の形態を変えていって良い時代だと思います。

ー実際にトークナビでは様々な働き方をする女性がいるのですね?

約70名いるメンバーの働き方や仕事量はライフステージに合わせてそれぞれ違う、ユニークな環境です。今後はこういった形がスタンダードになるのかもしれないと感じています。

編集後記

ライターN

アナウンサーというと「現場に立つお仕事」というイメージがあり、在宅仕事と結びつきませんでした。しかし、猪崎さんは発想を変えることで、経験を活かせる仕事に出会い、自分にとっての子育てと仕事のちょうど良いスタイルを実現されていました。

どんな仕事も、少し見方を変えることで、広がる可能性はあるのだな、と気づかされるお話です。結婚や育児による離職を経験し、「働きたいけど、働けない」と悩んでいる方に、猪崎さんやトークナビさんのメッセージがぜひ届いてほしいです。

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