在宅・フリーランスという働き方を選択した”働くママ”への「在宅ママインタビュー」。
今回はモンテッソーリ教育の教室を主宰・親子講座を開催されている杉えみこさんへのインタビューの後編です。(前編はこちら)
育児をしながら仕事をする上で、欠かせない子どもの心の安定。どんなに環境を整えても、子どもが不安定だと何事もうまくいきません。
後編は、子どもの向き合い方やこれからの目標について杉さんに伺いました。
モンテッソーリ教育とは
モンテッソーリ教育は、イタリアの女医であったマリア・モンテッソーリが子どもを科学的に観察し、そこから見えた事実に基づき確立された教育法です。
モンテッソーリ教育の目的は「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」ことです。
昨今、日本では藤井聡太棋士が幼少期にモンテッソーリ幼稚園に通っていたことで話題になりましたが、世界ではアンネ・フランクや、イギリス王室、ピーター・ドラッガーやマイクロソフト創業者(ビル・ゲイツ)、Amazon.com創設者(ジョセフ・ベゾス)、Google共同設立者(セルゲイ・ブリン、ラリー・ペイジ)、Facebook創業者(マーク・ザッカーバーグ)などもモンテッソーリ教育を受けたと言われており、マハトマ・ガンジーにも支持された教育法です。
仕事と育児、介護のバランスの取り方
➖お母様を介護されていると伺いました。その中で子育てと育児の両立をするのは、強い精神力を持っていないと立ち向かえないのでは…と感じます。
やってしまえばできてしまうのですよね…。
母は介護が必要になって、約10年になります。実家の父が日々介護していて、私は月に1度1週間ほど自宅に帰省して介護をしています。
娘も協力的で”おばあちゃんを助けにいく”という気持ちになっているようで。母が間違ってしてしまうことを、娘は「これは違うよ」と率先してケアしてくれていますね。母がやることの手順が分からなくなり、慌てている時は、娘が母に手順を見せてお手本になってくれることも。
横浜一の癇癪持ち、とまで言われた娘ですが、母のことをお世話する時は自分でよく考えて行動しているように見えますね。
娘は現在4歳ですが、それまで頻繁にあった癇癪を起こすことがなくなりました!
➖娘さんの癇癪がなくなったのはどうしてでしょうか?
娘の感情が昂りその時は解決できないことも、改めてその時の行動を振り返る時間を設けて、娘と話し合います。
話し合いの時間は、娘の感情が落ち着いている時。その話し合いの時間を通じて娘自身、自己洞察できるようになりました。
「私、お友達に引っ張られたから、やり返そうと思ったけど、お友達はきっと嫌な気持ちになると思ってやめた。」
と、自分の感情をコントロールできるようになってきましたね。
娘自身感情のコントロールをうまくできない時、
「ママ、私はやる前に(自分の気持ちをコントロールできないのが)わかるようになってきた」
と話してくれるまでになりました。
➖振り返りの時間はどんな時にしていますか?
娘の感情が落ち着いている時ですね。何かをしている時のついでではやらないようにしています。
まず、娘が私と向き合ってくれるなと感じた時に、「振り返りの話をしたいけどいい?」と尋ねます。その問いかけに娘がOKだった場合に、行動を振り返るようにしています。あとはお風呂に入っているときですね。
➖振り返りの時間…自分と子どもは今までその時間を持っていなかったと思います。子どもに対して、「お母さんはこれだけ怒っているんだ」という怒りの感情を出しながら接してしまうことも…。
私もイライラするのはわかりますよ!娘がイライラしている時に、
「お母さんだって大変なの、わかって!」
ということを娘にぶつけていました。
「あなたの泣きたい気持ちはわかるけど、こっちの気持ちをわかって!」
と娘に伝えると余計泣く。そうなると、こちらもたたみかけるように、
「だからさー!」
と声を荒げてしまう。
夫も単身赴任中ですし、周囲に話す人もいない。そういう状況だと、
「あなたさえ泣き止めば、お母さんはこんな風に声を荒げる必要はないし、もっと優しくできるの、わかる?」
とすごんでしまうことも。なんとか泣き止ませようとしていましたが、あれは脅しの言葉で、同時に怒りの吐口だったと思います。
娘の気持ちに寄り添い、振り返りの時間を設けるようになった今では、私も冷静に振る舞えるようになりました。
➖言いすぎてしまったことに対して、親も反省しますよね。ダメだなと思いつつ、また子どもに対して同じことを繰り返す。どうやって気持ちを切り替えたらいいのでしょうか?
やってしまったことが間違っていた、と気づいた時にその気持ちをお子さんに話すべきです。親にも感情があるということを、子どもも理解する必要がありますから。すべての人が心穏やかで何事にも動じないわけではありませんよね。当然感情を剥き出しにすることだってあります。なので、その点は気にしなくても大丈夫です。ただ、反省した時は必ず子どもに伝えるようにしてください。
➖大事にしていること、ルールなどがあれば教えてください。
子どもは私を見ているということを最も意識しています。そして、どんな時も、必ず娘を受け入れるということを心掛けています。
あとは、いつもどんな人や出来事にも感謝するようにし、心で思うこと、話すこと、行動が一致する人間でありたいと思っています。
夫婦関係や親子関係、両親においても感謝を伝え、考えや思いを話す場を設けています。
➖仕事で息抜きをするときのグッズやオススメの図書など、好きなものをご紹介ください。
モンテッソーリ教具はとも美しく、それを見るのが息抜きになっています。
また子どもがどういった教材で集中するのかを考えながら、自分で教具を工作するのが最近の楽しみです。
おススメの図書は、佐々木正美先生の「あなたは人生に感謝ができますか?」です。
山崎豊子さんや司馬遼太郎さんの本も好きです。もちろんマリア・モンテッソーリの本も大好きです。あとは銀色夏生さんが好きでしたね。
基本的には運動が好きで大学は体育会でしたので、4年ぶり(出産後、運動ゼロ)に運動を再開しました。
➖これからどういう風に暮らしていきたいですか?目標やプランを教えていただきたいです。
現在学んでいる“ルーティンメソッド”の上に、モンテッソーリ教育を行えるようなスクールがつくれればいいなと思っています。やりたいことをカタチにしたいですね!
子どもを預けたいと思っていても親御さんが心から満足できる預け先ってなかなかありませんよね。だから、私が目指すモンテッソーリ教育のスクールでは、一時預かりができる場にもしたいです。ただ預かるだけじゃなく、子どもがしっかりと自立できるお手伝いをする…そんな教育施設を目指したいですね。
コロナのこともあり、その形態については柔軟でありたいと思っています。現在は自分自身が現場にたっていますが、理念に共感してくれる方たちと力を合わせ、そういった場を広げられればいいなと思っています。
無知であることがたくさんの悲劇を生み出すと思っていますし、それこそ地球環境も教育でしか変わらない気がします。これからは教育が世界を変えるのではないでしょうか。
➖社会や国に対して望むこと、在宅(フリーランス)という働き方を選んで、どんな風に感じていますか?
小さな子どもがいると、親の活動自体は制限されてしまうと感じています。もちろん保育園や一時託児という選択肢もありますが、その時限りのサポートであるような気がして。
今ではなく、近い将来、私たちのしてきた結果が子どもによって示されることになります。将来を担う大切な存在である子どもの成長や発達を知り、大人の心の在り方や接し方がいかに重要かを考えた保育の場が増えればいいなと思います。
はたママ読者へのメッセージ
一番大事にしてもらいたいのは、「自分の感情」ですね。子どもと一緒にいるとイライラの感情も起きて当然。たとえイライラしてしまったとしても、ママは自分だけを責めないで欲しいです。自分の感情を大事にした上で、起こった行動についてお子さんと一緒に話し合ってはどうでしょうか。常に子どもや家族は自分の人生のパートナーだと思って欲しいですね。
あと、子育てや仕事は怖くない!両立が大切と言われているけど、自分の中の感情の折り合いがつけば、決して世間一般で言われるような“良いお母さん”でいる必要はないと思いますよ。仕事を完璧にやらないといけない、ということもないと思います。自分ができる範囲で自分の感情を大切にしながら、その時に「何が一番大事」なのかをきちんと見極める。困ったら、家族や子どもを巻き込みながら進んでいくのが良いと思います。
ままならない状況を打開するためには、何かを学ぶのも手段のひとつかなと思っています。私にとって、それはモンテッソーリ教育など、子どもの教育に関して学ぶことでした。
みなさんの自分の人生のゴールは何でしょうか。
そのゴールや手にしたいものが、在宅やフリーランスという働き方で得られることを願っています!
今回は通常のインタビューのほかに、番外編として育児のヒントも伺いました。
今後、はたママで数回に渡ってお届けしますので、お楽しみに!
【杉さんの教室URL】
お母様の介護という背景があり、ご自身のキャリアの再考や育児に向き合う中、新たに勉強を初め、子どもの可能性や未来を切り拓くお仕事をされた杉さん。その心の成熟度に感心するしかありませんでした…!
杉さんからのメッセージの中に、ままならない状況を打開するためには、何かを学ぶのも手段のひとつ、というものがありました。
これはとても大切なことだと思います。現状を打開するには前に進むしかない。私たちはずっと学び続けることで、本来の問題を解決するヒントを得ているのかもしれません。
確かに杉さんの会社の福利厚生は素晴らしく、ずっと就業することも可能だったでしょう。しかし、通常の働き方のままだと、疲弊しきってしまったかもしれません。
杉さんが現在直面されている問題は、決して人ごとでなく、いつか自分の身にも起こることかもしれません。
その課題にぶつかった時、キャリアを断ち切るのではなく、働き方を見直してみる努力をしたいと思いました。そして、自分一人思い悩むのではなく、パートナーとして家族を頼ろう、そんな風に思いました。
今回のインタビューでは、子どもへの寄り添い方を学びました!ママがしっかり仕事に集中するためには、子どもの心が安定していなければ成り立ちませんから。まもなく迎える冬休み、今回の学びを生活に取り入れたいと思います。