福岡でフルリモート勤務をしている株式会社ライボのデザイナー・高橋奈津美さんのお話に続いてお届けするのは、同社の創業者であり、代表取締役の小谷匠さんのインタビュー。フルリモート勤務を実践してみて感じたメリットや課題について、経営者の視点から率直に語ってくださいました。さらに、同社が展開する、キャリアや就職・転職に特化した匿名相談サービス『JobQ(https://job-q.me/)』についてもお聞きしました。
株式会社ライボのフルリモート勤務について
―御社の在宅勤務の取り組みについて教えてください。
もともと当社は出社が中心でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、リモートワークを推奨するようになりました。そして前回高橋がお伝えしたように、2021年3月に、福岡に移住するかたちで当社初のフルリモートワーク社員が誕生しました。その後、大阪や沖縄でもフルリモート勤務のメンバーが出てきています。
当社はリモートワークに移行する以前も、「自由と裁量と責任」をコンセプトに勤務時間や人事制度を整えていました。例を一つ挙げると、早期からフレックスタイムを導入し、コアタイムを11時~17時に設定しています。そして、このコアタイムも11時~15時に短くすることを考えています。というのも、子育て中のメンバーを見ていると、保育園へのお迎えがボトルネックになりがちだなと感じているからです。コアタイムを15時までにしてお迎えに行ける時間に余裕を持たせることで、例えば仕事がひと段落したらお迎えに行って、寝かしつけが終わった後にまた少し残務をするといった、自分に合った働き方ができるのではないでしょうか。特に今はリモートワークに移行できているので、さらに柔軟な働き方がしやすくなっていると思います。
―子育てしながら働いている女性も多くいらっしゃるのですか?
いろいろな勤務形態がありますが、スタッフ約50名のうち女性の比率は3割程度で、女性スタッフのうち半数弱は子育て中です。
女性だけでなく男性も、子育てをガッツリしながら働いているメンバーがいますよ。ほぼ毎日社内の連絡ツールに「お迎えに行ってきます」という投稿がされているので、相当子育てにコミットしているのだろうなと思っています。
―男女問わずプライベートと仕事を大事にしながら働くという雰囲気があるのですね。御社は2015年に設立とのことですが、最初からそのような環境を整えていたのでしょうか。
「自由と裁量と責任」というコンセプトは初めからありました。ただ、僕が起業したのは24歳の時、ほぼ学生ベンチャーのようなかたちでした。在籍メンバーもほとんどが学生~20代前半、一番上で25~26歳でしたので、設立して数年間はがむしゃらに働きました。それが2019年あたりから中途採用に力を入れ始めるようになり、平均年齢も 35~36歳まで上がってきました。おのずと子育て期のメンバーも増えてきたのです。
当社は、「『個』が活躍する社会を創る」というビジョンを掲げています。「社会を創る」と言っている我々自身が、一人ひとりが活躍できる会社づくりをしていくのは、当然だと考えました。中途採用のメンバー増えたことで、一層そのような雰囲気になっていったと感じています。
―さまざまな取り組みに対する社内の反応はいかがですか?
一番典型的なのは、前回のインタビューにも登場した、夫婦で福岡に移住してフルリモート勤務をしているケースでしょうか。もともとはフルリモートで仕事をするような制度設計になっていませんでしたが、福岡で仕事をしたいという相談をもらったわけです。そのとき「相談があるのは、柔軟な働き方を許容してもらえそうという雰囲気があるからなのかな」と思いました。
せっかく提案をもらったのなら一度チャレンジしてみてもいいかなと考えて、特に検討にあげたりせず、そのままゴーサインを出しました。
―いろんな地方で働く人がいることで、会社の中の多様性が出てくるのかもしれませんね。
それはあると思います。僕自身は他の会社で働いた経験が少なくて、自分の会社のことしかよく知らないのですが、中途入社のメンバーに話を聞くと、ライボは多様性や他者へのリスペクトが大切にされている社風のようです。それがますます進むといいなと思います。
―現在は、大阪と沖縄でもフルリモート勤務のメンバーがいるとのことですが、福岡での事例がスムーズにいって、他でもフルリモートをという流れになったのでしょうか。
そうですね。ただ、対面のほうが効率的と感じる業務もあります。一定の障壁はあるもののリモートワークのメリットも大きいので、そこを天秤にかけている状態です。
―メリットはどのようなことでしょうか?
採用活動をする時に、間口を広げて候補者さんをお迎えできるのが一番のメリットです。それから、オンライン前提で仕事をするので、議事録やログを残す文化がより強くなっていると思います。つまり、言語化能力が求められてきていますね。企業文化的なことと採用にまつわること、大きく2つのメリットがあると感じています。
―では課題は何かありますか?
収束させるような仕事、つまり業務フローがしっかり決まっているような仕事はリモートで進めることになんら支障はありません。逆に発散させるような仕事、例えばアイディアを出すとか、未来を一緒に模索するといった仕事は、やはり対面の方がやりやすいですね。
そういったことから、全社で合宿をして、経営計画に対してディスカッションする機会を設けています。残念ながら当面はコロナ禍で延期となりそうですが、合宿には交通費を支払って出張で東京へ来てもらうかたちを考えています。そもそもフルリモートで働いていることで、会社としては毎月の交通費がかかってないので、数カ月に1回出張で来てもらうぐらいは コストという観点でもいいのかなと思っています。
キャリアや就職・転職に特化した匿名相談サービス「JobQ」について
―JobQとはどのようなサービスですか?
ユーザー間で転職や仕事、キャリアに関する相談を匿名でし合えるプラットフォームです。2015年の6月にリリースし、現在は月間約150万人の方にご利用いただいております。
―はたママの主な読者層である子育て世代は、JobQをどのように活用したらいいでしょう?
検索するだけでは得られない個別具体的な相談ができますので、転職活動という大きな岐路に立った時にアドバイスを求めてみたら、新たな視点が開けるのではないでしょうか。また、フラットにいろいろなテーマを扱っていますので、日ごろ仕事と子育ての両立に悩んでいる方もJobQをのぞいてもらえれば、同じ境遇の方がいらっしゃると思います。
JobQは、誰でもカジュアルに相談ができる場を目指しています。匿名の投稿サイトというと、誹謗中傷が飛んでくるとか 、怖いイメージを持たれる方もいるかと思います。ですが、ご覧いただくとわかりますが、とてもクリーンで優しい場所になっています。これは創業期からかなり意識している場づくりです。
―今後考えている取り組みについて教えてください。
JobQは、ユーザー間で相談ができるというかたちで運営してきましたが、年々ニーズが幅広くなってきていると感じています。企業のことを調べたいとか、キャリアアドバイザーや転職エージェントなどプロに相談したいとかですね。そういったニーズにお応えして、より大きなユーザー価値を生んで行くことが求められていると思います。今後さらに機能開発を進めていき、いずれは転職活動を一貫してサポートできるサービスにしていきたいですね。
―御社ではどのような人材を求めていますか。
まず、能動的に物事を進められる方というのは明確にあります。冒頭でも「自由と裁量と責任」という言葉を申し上げました。自由だからこそ、自分で物事を前に進めていく力が求められます。それから、特に今回のリモートワークの話題に紐付くんですが、利他的な人ですね。そもそもの心がきれいな方が社内にたくさんいると、働き方という観点でもうまくいくと思います。
―リモートワークは各自の裁量がより大きくなるから、その人自身の心持ちが非常に大切になるということでしょうか。
そうですね。それが制約を増やさないためのポイントだと思います。
はたママ読者へのメッセージ
―最後に、はたママprojectの読者へメッセージをお願いします。
想像以上に長引くコロナ禍で、日常生活がさまざまな制約を受けています。一方で、リモートワークといった新しい概念が登場してきて、それなりに社会は適応していっている面もあるのではないでしょうか。そうは言っても、働き方がこれまでとは大きく変わっていく中で、仕事や子育てで悩んだり迷ったりすることもあると思います。そんなときはぜひJobQをのぞきに来てください!
2015年に弱冠24歳で起業した小谷さん。「がむしゃら」な創業期を経て、個々の背景を考慮した働き方へと柔軟にシフトチェンジしていけたのは、「自由と裁量と責任」という一貫したコンセプトがあったからではないでしょうか。立ち返るべき基本があるというのは強いことだと思いました。
JobQのサービスについて、正直、話を聞く前は匿名の相談サイトということに少し不安も感じていました。しかし、「割れた窓を放置していると、その地区の治安が悪くなるという『割れ窓理論』があり、その逆がディズニーランド。 ディズニーランドはポイ捨てが一切ないから、誰もポイ捨てをしない。そういう場づくりを重視している」ということを話してくださり、なるほどと思いました。皆さんもJobQを活用してみてくださいね。