中小企業向けのクラウドソリューション事業を展開するキャップクラウド株式会社。「働き方、パーソナライズ」という企業理念のもと、2020年に働く「場所」と「時間」を自由に選択できる『働き方選択制度』を導入。社員一人ひとりの家庭環境や社会情勢に合わせた柔軟な働き方を実現しています。
今回は、キャップクラウドならではの働き方やリモートワークを続けるにあたっての課題などを、執行役員 兼 社長室室長である松永文音さんにお聞きしました。
目次
リモートワークがスタンダード! 全国300カ所以上で勤務可能
ーさっそくですが、御社の事業内容を教えてください。
大きく分けて2つの事業があります。
1つ目は、中小企業向けのクラウドソリューション事業。2つ目は、山梨県富士吉田市で展開している地域活性化事業です。
ー御社の働きやすい環境作りや制度について教えていただけますか?
はい。弊社では会社設立当初から『在宅勤務制度』を整えていました。事前に申請を出すことによって主に自宅での勤務を認める制度です。
ー会社設立当初からリモートワークを取り入れていたんですね。
はい。新型コロナウイルス感染拡大後は、リモートワークという働き方を当社のスタンダードな働き方とし、世の中の状況・業務状況・家庭状況によって働く場所を選択できる仕組みへと進化させました。
働き方の多様化を推進し、「一人にひとつ」の働き方を手に入れてもらうために会社で用意した勤務地は2021年11月時点で全国300カ所以上になります。
2020年には『働き方選択制度』に改名し、現在は社員それぞれがその日一番のパフォーマンスを発揮できる仕事場を選びながら仕事をしています。
ーどのように『在宅勤務制度』から『働き方選択制度』に進化したのでしょうか?
最初は代表の萱沼が制度を発案しました。
その後、徐々に制度の中身を整えつつ、2020年5月にさまざまな部署の協力を得て『働き方選択制度』のプロジェクトを立ち上げました。
私がマネージャーを務め、人事担当、広報担当、事務担当のメンバーで制度を整えました。
ーすごいですね。新しい制度を立ち上げて社内に浸透させるのはとても大変なことですよね。御社ではスムーズに浸透していったのでしょうか?
もちろん最初は「顔を見て働かないと」という方もいらっしゃいました。ただ、新型コロナウイルスの影響でどうしても東京にある本社へ全員出社してもらうことが難しいと判断したので、これまで会社で働いていた社員を含めて皆さんにテレワークをしてもらうことで、徐々に考え方が変化してきたように思います。以前は、「午前中は自宅で、午後は会社で働く」というように一部分だけ取り入れている方が多かったですが、今はその日の状況に応じてベストな働く場所を選択できていると感じます。
ー素晴らしいですね!
私個人の例になりますが、2015年頃に学生のインターンシップとしてキャップクラウドで働いていた時に、学業との両立のために『在宅勤務制度』を利用しました。
当時、私は大学3年生だったので仕事と学業の両立が難しくて。「本社だけではなく家でも働きたい」と相談しました。
ー相談するのは結構勇気がいりませんでしたか?
そうですね。でも、既に在宅勤務をしている社員さんが何名かいらっしゃったので、スッと聞き入れてもらえました。
弊社としては「より活躍できる人材を増やすためにリモートワーク制度を使おう」という気持ちが強いです。
介護や育児といった特別な事情がなくても、全社員が使うことができます。
早朝勤務・中抜けOK! 心おきなく育児・介護・学業に時間を使える
ー御社では5時から22時の間で働くことができるそうですが、具体的にはどのように活用されているのですか?
働くママさんを例にすると、朝5時頃から仕事をスタートし、子どもが起きる時間になったら一旦中断し、朝食の準備や送り迎えをします。その後、自宅に戻ったら仕事を再開する、という方もいらっしゃいます。
そのママさんは、1日の中で仕事とプライベートを行ったり来たりして、トータルで1日8時間を担保することで正社員と同じ待遇で働いています。こういう働き方は、特に開発のメンバーに多いですね。
ー介護をされている方もいらっしゃるんですか?
はい。ご家族の介護をしている方もいます。自宅でテレワークをしながらデイケア施設に送迎する時間だけ勤務時間外として労務管理ツールに記録することで、心置きなくご家族との時間を過ごせているそうです。
ーなるほど。柔軟な働き方を実現するため、御社では独自の労務管理ツールを利用していらっしゃるそうですね。
はい、さまざまな拠点で働く社員の勤務状況を把握できる『anyplace』というITツールを開発、活用しています。
コワーキングスペース、シェアオフィス、カフェや飲食店など、『anyplaceパスポート提携施設』にBeacon端末を設置し、スマートフォンと連携することで「場所」と「時間」の情報を記録することができます。
社内で使うだけではなく、正式なサービスとしても提供しています。
リモートなのに、すぐ隣にいる感覚で話せる仕組みとは?
ーリモートワークの課題として、孤独感や仕事の悩みを相談しづらいという点があげられます。御社ではどのように解消していますか?
私の部署では、メンバーは東京の本社、山梨県富士吉田市のオフィス、自宅…と散らばって仕事をしています。
そのため、コミュニケーションが取りやすいように勤務時間中はZoomを常時接続しています。カメラを常にオンにして、みんなの顔が見えるような状況ですね。
話しかけたい時はマイクをオンにして、「今ちょっといいですか?」といった感じで気軽に話すことができます。
ーチャットでお伺いを立てるのではなく、目の前で話しかける感じですか?
そうです。すぐ隣にいるような感覚で話しかけますね。
メンバーの顔が見えるので、「電話してるな」とか「今は真剣に何か考えているな」とか、相手の状況を感じながら仕事ができます。
ー雑談もするんですか?
雑談は、意識的にしています!
業務の隙間時間に「そっちの天気はどう?」とか「最近こんなことがあったよ」といったことを2〜3分喋ったり、「お昼まであと1時間だからがんばろうね」みたいな話とか。
ー仲間の顔が見えると、仕事のモチベーションも上がりそうですね。
はい。「メンバーと一緒に働いている」「ちゃんと仲間がいるんだ」と感じられますね。うまく表現できませんが、Zoomで繋がっていると、家で1人で働いてても「仕事感」がすごいです(笑)。
新入社員のメンタル不調がきっかけでZoomを導入
ーZoomは最初から取り入れていたのですか?
いえ、最初は使っていませんでした。
きっかけは、入社1年目の新入社員がメンタル面で体調を崩してしまったことです。
その社員にじっくり話を聞かせてもらったのですが、
「先輩に相談したくても、相談して良いタイミングがわからない・判断できない」
「怖い人ではないとわかっているが、なんとなく聞きづらい」
「わからないまま放置してしまい、案件の進捗が遅れて注意を受けた」
という感じになってしまっていました。
他にも、ちょっとしたことですが「電話対応がうまくいかなくて、ちょっと気持ちが沈んじゃった」という時にも、目の前にいないと「大丈夫?」と声をかけてあげられない、ということも…。
そこで「じゃあ一旦Zoomで繋げて仕事を一緒にやってみよう」といってスタートしました。
ーなるほど。リモートで働いているからこそ、コミュニケーション。は重要ですよね。
はい。あとは週に1回、会社で顔を合わせて働く「コミュニケーションデー」を設けています。
その日は山梨と東京の各拠点でしっかりとコミュニケーションをとり、それ以外はテレワークで業務に集中する。その切り替えによって、バランスをとっています。
ーお話を伺っていると、密にコミュニケーションを取られていて孤独感を感じにくいところが良いですね。
コロナ禍による新たな課題
ーさまざまな工夫をしていらっしゃいますが、コロナ禍で新たな課題などは出ましたか?
そうですね。テレワークをほぼ全社員がしているからこそ、「成果の評価をどのようにするか」という課題は常にありますね。
弊社では、「仕事の種類は大きく2つに分けられる」という話をすることがあります。
1つ目は技術職。自分の力だけでコツコツと作り上げることができ、成果物が目に見えやすいタイプです。
2つ目は営業事務や事務職といった「支える側」の職種です。他部署の困りごとを解決することが成果であり、受電待機などが仕事に含まれます。
それぞれの「仕事の質」を向上させるためには、相手を理解しようとする意識とコミュニケーションの機会が必要だと考えています。
なぜなら、成果物重視で仕事を評価するようになると、後者のタイプが社内でいい評価をもらえずに意欲を失ってしまったり、必要とされる時に気付くことができなかったりして、「支える側」の仕事が成り立たなくなってしまうからです。テレワーク中の仕事の評価をする際に分かりやすいのは前者のタイプですが、後者のタイプがいることで会社は円滑に業務を進めることができるので、双方のバランスはとても大切だと感じています。
2つのタイプの垣根を作らないためのコミュニケーション機会は会社で積極的に設けたいと考えていて、年に1〜2回全員で集まる機会を設けることが目標です。
双方をよく知ることで仕事を円滑に行い、結果的に仕事の質を高めていきたいですね。
「地元に貢献したい」富士吉田市での地域活性化事業とは
ー山梨県富士吉田市で展開している地域活性化事業では、具体的にはどういったことをされているんですか? また、この事業を始めたきっかけは何でしょうか?
事業の内容は、主にコワーキングスペース『ドットワーク富士吉田』と『.work ANNEX』の運営です。
きっかけは、富士吉田市出身の弊社代表・萱沼が「富士吉田市の人口が減り、寂しくなっていく」という現状に危機感を持っていたことです。
ある時、地元の友人達と「地元に貢献したいよね」という話になり、代表の萱沼が市のWebサイトに問い合わせをしたことがスタートラインになります。
当初、市役所の方からは「移住者(定住人口)を増やしたい」という話があったのですが、「いきなり知らない土地に移住するのは難しいよね」という話になりまして。
であれば、「まずは、富士吉田市に短期〜中長期滞在が可能な『関係人口』を増やすところから始めよう」という話になりました。
ーなるほど。コワーキングスペースを設置することで、富士吉田市で働く人を増やすということですね。
おっしゃる通りです。
地域おこし協力隊などの協力を得て、2018年9月に『ドットワーク富士吉田』を、2020年12月には無人コワーキングスペース『.work ANNEX』をオープンしました。
「子どもと過ごす時間が増えた」「生活の質が上がった」
ーこの事業をきっかけに、富士吉田市に移住された方はいらっしゃるのでしょうか?
はい。2018年9月にプロジェクトを開始してから、当プロジェクトをきっかけに新規雇用した方が15名、うち3名はUターンでの就職です。さらに、現地採用3名、移住者は十数名、うち従業員の家族は3名となっています。
ーご家族で移住された方もいらっしゃるのですね!
1歳のお子さまがいる従業員で、コロナをきっかけに弊社に転職し、富士吉田市に移住した方がいます。
以前は別の会社でかなりハードな働き方をしていたそうです。満員電車に乗って朝早くから夜遅くまで働き、家には帰ってきて寝るだけという生活をしている中で、子どもと触れ合う時間が全然なかったという話を聞きました。
育児に関してもっと参加したい気持ちがあったのにも関わらずなかなか時間がとれないことにもどかしく感じていたそうなのですが、今はほぼ定時で退勤してお子さんの送り迎えしたり、お風呂入れてあげたりと、ご家族と過ごす時間が増えたそうです。
ーご家族はきっとホッとしているでしょうね。御社内では「生活の質が上がった」という声も多いとお聞きしました。
はい。「東京で働き続けるのがちょっと息苦しいな」と思う人たちが、コロナをきっかけに富士吉田市に来て「富士山を見ながら働きたい」と言って働いてくれたりとか。
コロナ禍は、働き方を見直すひとつのきっかけになったのかな、と思います。
ーおっしゃる通りですね。松永さん、本日はありがとうございました!