元トップ営業マンが在宅勤務にチャレンジ 何より変わったのは妻への思いやり

1974年の設立以来、サッシをはじめとする住宅設備機器の販売において、リーディングカンパニーの座を築いている八尾トーヨー住器株式会社。2021年にも、同社のDX化やテレワーク推進の取り組みについてインタビューをさせていただきました。今回ご登場いただくのは、「昔ながらの仕事人間」だったという元トップ営業マンの山田さん。第3子の誕生時に在宅勤務を選択した思いや、その際に得た気づきについて語っていただきました。

山田 大輔さんのプロフィール 

職業:八尾トーヨー住器株式会社 インナーセールス部 スーパーバイザー
(外回りをするセールスを、オフィス内でサポートする部門の責任者)
お子さんの年齢:6歳・4歳・0歳
居住地:大阪府
勤務形態 正社員/基本的には出勤(8:30-17:30)

管理職で2週間の在宅勤務を決断。その背景は?

➖インナーセールス部のトップという立場で、2週間の在宅勤務をしたきっかけは何だったのでしょうか。

第3子の誕生時に上の兄弟を見られる人が私以外にいなかったため、仕事と家事育児の両立を考えて在宅勤務を選択しました。

チーム内には、これまでに出産や子育てを経験した女性メンバーが多く、また同時期に産休育休を取得する女性社員もいました。周りの理解が得られやすい環境であるということ、責任者である私が取得することが、他のメンバーの取得しやすさに繋がると考えたからです。

周囲からは、育休を取ったらという声もありました。ですが、どちらかというと私は昔ながらの仕事人間。休むのが怖いという思いがありました。マネジメント業務ですので、どうしても部下のことが気になり、休んでいてもパソコンを開いてしまうだろうなと思い、在宅勤務を選びました。

➖実際に在宅勤務をしてどう感じられましたか?
家事や育児の大変さを、身をもって感じられました。特に、朝の登校・登園までの時間は、こちらの想定通りに進みませんし、とにかく時間に追われました。始業時間までに家事を終わらせることが難しかったですね。夕方は夕方で、子どもが帰宅後の仕事と子育ての両立に苦労しました。

一方で、これまで見ることがなかった子どもたちの姿が見られたことに喜びを感じました。2番目の子を幼稚園バスに送っていっても、始業時間に間に合うのは在宅勤務だからです。朝からお弁当を作ることもありましたが、残さずに食べてくれたことも嬉しかったです。

3人のお子さんと山田さん

在宅勤務で育児に関わることで気付いたことがあったそうですね。

普段はやっぱり仕事がメインで、1日のほとんどを仕事のことを考えて過ごしています。子どもたちと話をする時間はあっても、子どもの本当の思いまで聞き取ってあげられているのかなということを、今回強く感じました。 

また、仕事の時間を優先させたい時、子どもの気を逸らすために、ついつい良くない習慣を許してしまい、教育面の難しさに気付きました。これまでは「テレビを見せすぎたらだめ」なんて妻に言っていましたが、毎日の子育ての中では、そうはいかない現実がありますよね。

在宅勤務時は、たとえば、17時から18時は家事育児をして、そのあと仕事を再開するといったように、フレキシブルに業務を行っていました。そうでないと、育児と仕事の両立はとてもじゃないけどできません。
フレックスタイム制で勤務時間を調整しながら子どもの成長に関わるという働き方を、他の多くのメンバーも体感してほしいと感じました。

ワークライフバランスを大切にする意識が会社全体に浸透

仕事面でのご苦労はありましたか?

在宅勤務は、やはりコミュニケーションが難しくなります。社内のコミュニティとして、ラインワークスを活用しているので、そこで業務以外のラインを送るといったことで、自分からコミュニケーションを取るよう心掛けました。

今は、私自身は基本的には出勤していますが、他のメンバーは出勤と在宅勤務を半々で行っています。メンバーからいつでも相談を受けられる環境にあるので、仕事の進捗状況やモチベーション、その日の体調などを把握しやすいという点で対面のよさを感じています。

社内でお仕事をされている山田さん

在宅勤務から出社に戻ったときに、ギャップを感じることはありませんでしたか?

気持ちの切り替えが難しいところは多少ありました。ですから、女性社員が産休育休で1年間休んで復職するときなどは、相当エネルギーが必要で、周囲がケアしないといけないということが理解できました。

責任者として感じたことは、先に述べたように対面の良さはあるけれど、人材確保のためにもスムーズに在宅勤務ができる環境や仕組み作りと、男性・女性に係わらず産休や育休が取得できる制度はなくてはなりません。そして、産休・育休取得、在宅勤務のハードルを下げるためには、会社内やチーム内での認識を高めることが必要です。

山田さんが在宅勤務をすることに対して、他の男性社員はどんな反応だったのでしょう?
皆さん当たり前のように受け止めてくれました。ワークライフバランスを大切にする意識が会社全体に浸透してきていることを感じています。

今、山田さんは「ワーク」と「ライフ」のバランスは取れていると思いますか?
そうですね。少しでも早く帰ろうという気持ちに変わりました。子育てに対する共有認識が生まれ、少しは育児の苦労がわかるようになり、何より妻に対する思いやりの気持ちが増えました。

1人目と2人目の時は、子育てに関わる時間が少なかったのですが、働き方が変わっていく中で、在宅勤務で子どもとしっかりと関わることができて良かったと思っています。

2週間在宅勤務をやって終わりではなく、今も、風呂掃除、洗濯機を回す(干すまでの時間はないけれど)、雑巾がけなど、できることはしています。
多くの男性にこの経験をしてもらうことで、より家族の絆や夫婦の絆が生まれるのではないかなと思います。

「サポート」ではなく子育てを「共に楽しむ」経験を

育休取得、在宅勤務への切り替えなど、働き方に迷う男性にメッセージをお願いします。

私自身が仕事優先の生活をしてきたので、特に長男に対する育児の記憶がなく、「もっと関わっておけば良かった」と、今になって思います。妻に対しても、初産のしんどさや、その時の感情、何をしたら良いのかといった不安な気持ちに、もっと寄り添うことができたかも知れません。

出産や育児に関わる時間は、長い人生での中の一瞬です。サポートではなく、その時間を一緒に楽しめるような、関われて良かったと思える経験を、多くの人にしてほしいです。

従来の働き方になじみがある子育てが終わった世代と、これから結婚や子育てを経験していく若い世代の間にいるのが、私たちの世代です。今子育てをしている世代がパイプ役となって、この先のよりよい働き方を推進していけたらと思っています。

八尾トーヨー住器 働きやすい環境への新たな取り組み

本社1階にコミュニティスペース『恩智の里山』(おんぢのさとやま)オープンさせました。

本社1階・コミュニティスペース『恩智の里山』(おんぢのさとやま)

本社がある大阪府八尾市の一番東側に位置するのが「恩智」です。
『恩智の里山』は、本社近くの里山の景色を切り取り、コミュニティスペースとして表現しました。

①ハイレゾ音源により、山の中の人の耳に聴こえない音域までを再現した自然の音
②空間のプラスイオンを吸着しマイナスイオンだけを残す炭の塗料を使った壁装材
③迎えの木や木の壁の山小屋を作り木視率(もくしりつ)を高めた空間
といった工夫を施し、本当に自然の中にいるような落ち着ける空間を実現しました。

合わせて、スポーツアスリートなどに支持され、疲労回復やむくみ解消のなどの効果がある高気圧酸素ボックスを設置しています。

年齢の高いメンバーが増えていく中で、加齢による疲労感や、自律神経の乱れが原因の一つとされる更年期障害の症状などを、少しでも緩和できる場所にしたいと考えて、妥協せずに作りました。

現在は外部に向けたイベントを実施したり、社内ミーティングをしたり、事務処理などを行うオフィススペースとして使うなど、様々な使い方をしています。

編集後記

ライター・Y田

インタビューに同席くださった同社代表の金子さんによると、山田さんは元トップ営業マン。これまではプライベートを犠牲にしながら働いてきた部分もありましたが、このままではいけないという金子さんの思いに共感し、シフトチェンジしたのです。今回は在宅勤務という形でしたが、男性社員にもどんどん育休を取ってほしいとのことでした。

そして今後は、営業の仕事も、属人的でなくチームとして対応できるようにし、お客様に対応する職種でも在宅勤務を可能にしたいとのこと。歴史ある会社でありながら、新たな挑戦をしていく同社の今後が楽しみです。

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