がんを経験した人が入れる医療保険を手掛けるMICIN少額短期保険。2児の母である伊藤由貴奈さんは、大手の保険会社から2022年に転職し、前職の経験などを活かしてチームをリードし、入社から約1年半で取締役に就任しました。「本当に必要な人に保険を届けたい」という想いのもと商品開発に取り組む伊藤さんに、仕事への想いや子育てとの両立についてお話をうかがいました。
目次
ベンチャー「MICIN少額短期保険」へ 大手からなぜ転職?
ー貴社の事業内容を教えてください。
医療ベンチャーMICIN(マイシン)の子会社として2021年7月に開業し、2021年8月に乳がんなどの女性特有のがんを経験した方に向けて、再発や新たながんの診断を受けたときに一時金が給付される「がんを経験した女性を支えるがん保険」の販売を開始しました。一般的に、がんに一度罹るとすぐに保険に入るのは難しいとされていますが、この保険はがんの手術から6カ月経っていれば治療中でも加入できることが特徴です。この他にも、がんの種類やステージを問わずに全てのがん経験者が加入できる入院保険を展開するなど、再発時の経済的不安を感じる人を少しでも減らしたいという想いのもと、保険商品の開発・販売に取り組んでいます。
伊藤由貴奈さん
ーMICIN少額短期保険で働き始めるきっかけは何だったのでしょうか?
わたしは元々、大手の保険会社で新卒から働いていました。前職ではIRや法務コンプライアンス、商品開発など専門性の高い業務を経験しキャリアを積んでいましたし、「女性の活躍」に積極的な会社だったこともあり、前の職場では女性役員を目指していました。しかし、2021年8月にMICIN少額短期保険が、がんの手術後わずか6か月で加入でき、再発時に一時金を保障する「がん経験者向けの保険」を発売したことに衝撃を受け、すぐにカジュアル面接を申し込みました。そこで保険事業に対するメンバーの想いを聞いて、私もここで働きたい!とすぐに転職を決めました。
ライフスタイルに合わせた働きやすさ実感
ー伊藤さんは2人のお子さんがいらっしゃる中で転職をしたということですが、新たな環境で働くことへの戸惑いなどはありませんでしたか?
ありませんでした。子供が二人とも小学生になっており、私の住む自治体では公設学童の人数上限もありませんし、いざという時に頼れるママ友もたくさんいます。唯一気にしていたのは働き方の柔軟性ですが、今の会社ではそれも確保されています。
ーベンチャー企業と聞くと一人一人の役割が大きく忙しいイメージがありますが、現在はどのような働き方をしていますか?
MICIN少額短期保険は、ハイブリットワークが可能で、わたしは在宅9割、出勤1割の割合で働いています。(2023年7月時点)また、社内ではメンバーのカレンダーを公開していて、子どもの送り迎えの時間や子どもと食事をとる時間帯には、仕事の予定を入れないようカレンダーをブロックしている社員もいます。社員同士がそれを理解しながら仕事をしていて、それぞれのライフスタイルにあわせた働き方ができる環境が整っていると感じています。わたしも、在宅勤務の時には子ども達が学校から帰ってくる16時頃まで集中して仕事をして、子どもの帰宅後は一気に家事モードに気持ちを切り替え、メリハリをつけて働いています。日中の仕事のやり残しや確認作業は、子ども達が寝た後に行っています。
上司と談笑する伊藤さん
ー職場の働きやすさ以外に、伊藤さんご自身が考える「仕事と子育てを両立するためのコツ」はありますか?
子供にある程度任せるということです。子供は小学生になりましたし「あれもこれも」と手を出さずに、例えば多少忘れ物をしたとしても持ち物の準備は任せたり、時間の使い方などは自由にやらせるようにしています。これにより、家事や仕事に集中すべき時間をうまく保てますし、子どものことで家事や仕事が…と悶々とすることもありません。もちろん、できないことはサポートしますし、週末は子どもとの時間を大切にしています。電車が大好きな息子とは、月に1度は2人で経路は息子にお任せの電車デートに出かけます。また、自転車にはまっている娘とは、少し遠くのスーパーまで足をのばして、買い物を楽しんでいます。
週末は子ども達の希望の場所にお出かけ それぞれとデートすることも
子育て中のがん経験者と話す機会も 母としての人生経験も商品展開に活かしたい
ー前職で「女性役員」になることを目指していたということですが、MICIN少額短期保険では入社1年半でその目標を叶えたそうですね?
はい。昇進の機会をもらい2023年7月に取締役に就任しました。わたしは保険大手に18年間勤務し、保険事業を行ううえで重要な法令や規制を理解し、保険商品の開発ノウハウなども理解しています。少人数で運営する中で、幅広く業務をこなすことで、チームをリードしていくことを意識していますが、そうした部分を評価してもらえたのではないかと考えています。「働くママ」と聞くと、なかなか昇進は難しいのではないかとの印象があると思いますが、MICIN少額短期保険はその型にははまらない会社だと考えています。
ー取締役に昇進と聞いた時は「重圧」などはありませんでしたか?
自分の判断が会社の未来に大きな影響を与えることになるため、良い意味での緊張感を改めて持つことができました。「本当に必要な時に入れて、本当に必要な保障を受けられる」保険の提供を追求し、より多くのお客さまから信頼される会社にしていきたいです。
MICIN少額短期保険では、乳がんや子宮頸がんなど女性特有のがんを経験した方向けの保険を展開しており、がん経験者の中には、お子さんがいらっしゃる方もいます。私も子供が2人いますので、罹患したときに母親としてどんな不安を抱えるのかなど、よくわかります。また、父が胃がん・肺がんに罹患し、支える側の立場も経験しました。前職の経験だけでなく、女性・妻・母親・娘としての人生経験も商品展開に活かしていきたいです。
はたママ読者へのメッセージ
ー最後に、はたママprojectの読者へのメッセージをお願いします。
仕事と家事・育児の両立は本当に大変ですよね。バリバリ働きたい、細く長く働きたいなど人によって目指すものも違うと思いますし、特に子供がいると何が正解かわからずという方も多いのではないでしょうか。ただし、正解がわからないということは自分の考えや判断が間違いとも限らないということだと思いますので、肩の力を抜いて仕事や家族と向き合ってみると良いかもしれませんね。