育児休業明けから子供が小学校入学前まで利用できる仕事と子育ての両立支援制度

働く女性の出産・育児離職を防止するため、短時間勤務制度や残業の免除など法律で定められた仕事と子育ての両立支援制度があります。また2022年10月1日から、産後パパ育休(出生時育児休業)の開始や育児休業を分割して取得できるようになり、男性の育児と仕事の両立支援も進んでいます。当記事では、働く女性の育児休業明けから子供が小学校入学前まで利用できる仕事と子育ての両立支援制度について紹介します。

1 子供が1歳になるまでに復職した女性が利用できる制度は?

子供が1歳になるまでに復職した女性が請求した場合は、労働基準法の母性保護規定により時間外労働や休日労働・深夜労働等が免除されます。また法改正により、2022年10月1日から育児休業が分割して取得できるようになりました。

1.1 変形労働時間制の適用制限

変形労働時間制が導入されている業務でも、産後1年以内の女性が請求した場合は、法定労働時間を越える労働は禁止されています。
(労働基準法第66条第1項)

1.2 時間外労働・休日労働・深夜業の制限

産後1年以内の女性が請求した場合は、時間外労働、休日労働、深夜業(午後10時~翌日午前5時の勤務)をさせることはできません。
(労働基準法第66条第2項・第3項)

1.3 勤務時間中の育児時間

生後1歳未満の子供(養子も含む)を養育する女性は、1日2回各々少なくとも30分以上の育児時間を請求できます。
(労働基準法第67条)

1.4 分割して取得できるようになった1歳までの育児休業

原則として、下記に該当しない労働者は、子供の1歳(最長2歳)の誕生日前日まで育児休業を取得できます。

  • 日々雇い入れの労働者
  • 有期雇用労働者は、申出時点で子供が1歳6か月に達する日までに、労働契約(更新される場合は更新後の契約)の期間が満了することが明らかな場合
  • 労使協定で育児休業の取得対象外とされている労働者(入社1年未満の労働者や所定労働日数が週2日以下の労働者等)

2022年10月1日から、子供が1歳までの育児休業が2回に分割して取得できるようになりました。(育児・介護休業法第5条)

なお1歳6か月、2歳までの育児休業は、これまで通り分割して取得できません。

1.5 新型コロナウイルス感染症で保育所からの登園自粛要請による育児休業の再取得

これまで新型コロナウイルス感染症で、保育所からの登園自粛要請をされた場合、子供が1歳になるまで3回目以降の育児休業や1歳以降の育児休業の延長ができる等の特例が利用できました。令和5年5月8日に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に位置づけられたことに伴い、登園自粛要請等による育児休業の特例は、廃止されました。

出典:厚生労働省「【通達】育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の施行について職発0802第1号雇児発0802第3号平成28年8月2日最終改正令和5年4月28日雇均発0428第3号(令和5年5月8日)」

2 子供が3歳になるまで利用できる両立支援制度は?

子供が3歳になるまで利用できる両立支援制度には、短時間勤務制度と所定外労働の制限があります。

2.1 所定労働時間の短縮措置(短時間勤務)等

3歳未満の子供※を養育する労働者は、原則として1日の所定労働時間が6時間以下の短時間勤務制度が利用できます。(育児・介護休業法第23条第1項)
※子供の3歳の誕生日前日まで利用可能

短時間勤務制度の利用が困難な業務の場合は、下記のうちいずれかの代替措置が必要とされています。

  • 育児休業に関する制度に準ずる措置
  • フレックスタイム制
  • 始業・終業時間の繰り上げ・繰り下げ
  • 企業内保育施設の設置運営その他これに準ずるものの提供

なお所定労働時間の短縮措置は、企業が労働者の代表と労使協定を締結することで、下記の労働者を対象外とすることができます。

  • 入社1年未満の労働者
  • 所定労働日数が週2日以下の労働者
  • 業務の性質・実施体制に照らして短時間勤務が困難な業務の労働者
    (育児・介護休業法第23条第2項)。

短時間勤務制度を利用したいと考えている方は、対象外ではないか勤務先の就業規則や育児休業規程を確認しておきましょう。

2.2 所定外労働の制限

3歳未満の子供※を養育する労働者が、請求すると事業主は所定外労働をさせることはできません。請求できる回数には制限がなく、何度でも請求でき、1回の請求につき1カ月以上1年以内の期間の所定外労働が免除されます。
(育児・介護休業法第16条の8)

3 子供が小学校入学前まで利用できる両立支援制度は?

子供が小学校入学前※まで利用できる両立支援制度には、子の看護休暇時間外労働・深夜業の制限があります。子の看護休暇は、2021年1月1日から日々雇用される労働者を除いた、すべての労働者が時間単位で取得できるようになりました
※その子供が6歳に達する日の属する年度(4月1日から翌年3月31日まで)の3月31日まで

3.1 病気やケガの看護・予防接種・乳幼児健診で取得できる子の看護休暇

子の看護休暇は、病気やケガをした子供の世話または予防接種・健康診断を受けさせるために取得できる休暇です。対象になる予防接種は、4種混合やBCGなどの定期接種だけでなく、インフルエンザワクチンなど任意の予防接種を受けさせる場合も、子の看護休暇を取得することができます。子育てをしながら働き続けることができるように1日または時間単位で休暇を取得できます。

3.1.1 取得できる日数

事業主が特に定めをしない場合は、1年度(毎年4月1日から翌年3月31日まで)に5日まで、小学校入学前までの子供が2人以上いる場合は10日取得できます。

3.1.2 取得対象者

原則として、日々雇用される労働者を除いた、すべての労働者が取得できます。
ただし下記に該当する労働者は、子の看護休暇を取得できないという労使協定がある場合、休暇の申し出を拒まれた下記の該当者は、子の看護休暇を取得できません。

  • 労使協定がある場合、1日または時間単位での子の看護休暇を拒むことができる労働者

(1)入社6か月未満の労働者
(2)1週間の所定労働日数が2日以下の労働者は、子の看護休暇を取得できないという労使協定がある場合、休暇の申し出を拒まれた労働者は、子の看護休暇を取得できません。

  • 労使協定がある場合、時間単位での子の看護休暇を拒むことができる労働者

(3)時間単位で子の看護休暇を取得するのが困難と認められる業務の労働者

下記などの業務に就く労働者は、時間単位で子の看護休暇を取得できないという労使協定がある場合、1日単位でのみ子の看護休暇を取得させることができます。

  • 国際線の航空機に従事する客室乗務員等で所定労働時間の途中までまたは所定労働時間の途中から子の看護休暇を取得するのが困難な業務
  • 長時間の移動が必要な遠隔地で行う業務で、時間単位での子の看護休暇を取得した後の勤務時間または取得する前の勤務時間では処理するのが困難な業務
  • 流れ作業や交替制勤務による業務で時間単位での子の看護休暇を取得する人を勤務体制に組み込むことによって業務を遂行することが困難な業務

なお(3)の労働者から、1日単位での子の看護休暇取得の申し出があった場合は、事業主は、拒むことができません。

3.1.3 「子の看護休暇」の申出方法

子の看護休暇の取得は、下記の(1)~(4)を事業主に申し出ることによって行わなければならないとされています。

(1)労働者の氏名

(2)子供の氏名と生年月日

(3) 看護休暇を取得する年月日(1日未満の単位で取得する場合には、看護休暇の開始及び終了の年月日時)

(4)子供が負傷もしくは病気にかかっている事実、または予防接種や健康診断を受診するため

子の看護休暇の利用は、緊急であることが多いため、申し出の方法は、書面等の提出に限定されておらず、休暇取得当日に電話等で口頭で申し出をした場合の取得も認められています。また事業主は、会社で規定する書面の提出等を求める場合、事後でも差し支えないようにすることが必要です。

3.1.4 「子の看護休暇」取得の証明書類

事業主は、子の看護休暇を取得した労働者に証明する書類の提出を要求できます。
事業主は、子供の病気やケガを証明する書類として診断書だけでなく、病院の領収証や購入した薬の領収書、保育所を欠席したことが明らかとなる連絡帳、市町村からの乳幼児健康診断の通知等のコピーなどで確認する等柔軟な取り扱いが求められています。後日、勤務先に証明書類の提出を求められた時に対応できるように領収証などは、大切に保管しておきましょう。

3.2 小学校入学前の子供を養育する労働者のための時間外労働の制限

小学校入学前※の子供を養育する労働者が、子育てのため書面等で請求した場合、事業主は1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはならないとされています。開始日の1カ月前までに請求することが必要です。
※その子供が6歳に達する日の属する年度(4月1日から翌年3月31日まで)の3月31日まで

3.2.1 時間外労働の制限を請求できる回数

請求できる回数には制限がなく、何度でも請求でき、1回の請求につき1カ月以上1年以内の期間の時間外労働が免除されます。

3.2.2 時間外労働の制限が利用できない労働者

下記に該当する労働者は、対象外となり時間外労働の制限を利用できません。

  • 日々雇用される労働者
  • 入社1年未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

また事業の正常な運営を妨げる場合、事業主は請求を拒めるため、勤務先の就業規則や育児休業規程を確認しておきましょう。
(育児・介護休業法第17条第1項・第2項)

3.3 小学校入学前の子供を養育する労働者のための深夜業の制限

小学校入学前※の子供を養育する労働者が、子育てのため書面等で請求した場合、事業主は、深夜(午後10時から翌日午前5時)に労働をさせてはならないとされています。
(育児・介護休業法第19条)
※その子供が6歳に達する日の属する年度(4月1日から翌年3月31日まで)の3月31日まで

3.3.1 深夜業の制限を請求できる回数

請求できる回数には制限がなく、何度でも請求でき、1回の請求につき1カ月以上6か月以内の期間の深夜勤務が免除されます。

3.3.2 深夜業の制限を利用できない労働者

下記に該当する労働者は、対象外となり時間外労働の制限を利用できません。

  • 日々雇用される労働者
  • 入社1年未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 1週間の所定外労働のすべてが深夜にある労働者
  • 保育ができる16歳以上の下記のすべてに該当する同居の家族がいる労働者

①深夜に就業していないこと(深夜における就業日数が1か月について3日以下の場合を含む)。
②負傷、疾病等により子供の保育が困難な状態でないこと。
③ 6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定であるか、または産後8週間を経過しない人でないこと。

3.3.3 深夜業の制限の申出の方法

深夜業の制限を利用する場合は、開始日の1カ月前までに下記の(1)~(4)を書面などで請求することが必要です。事業主が適当と認める場合は、FAXまたは電子メールなどで請求することも可能です。

(1) 請求の年月日
(2) 労働者の氏名
(3) 請求に係る子供の氏名、生年月日及び労働者との続柄等
(4) 制限を開始しようとする日及び制限を終了しようとする日
(5) 請求に係る子供が養子である場合には養子縁組の効力発生日
(6) 深夜においてその子供を常態として保育することができる同居の家族がいないこと
(育児・介護休業法第19条第1項・第2項)

4 まとめ

今回ご紹介した仕事と子育ての両立支援は、労働基準法の母性保護規定以外の制度については男性労働者も利用できますが、自分から申し出をする必要があります。出産前に、ご夫婦で勤務先の就業規則や育児休業規程を確認しておきましょう。

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池口由里絵社会保険労務士
2015年3月に、島根県益田市にて社会保険労務士事務所を開業した池口由里絵と申します。 人材不足や改正育児介護休業法・2024年問題への対応などの労務管理に悩む社長さまのご相談をオンライン・メール・電話・訪問などご希望の方法で承っております。